研究実績の概要 |
注意の向け方やフィードバックが与えられるモダリティに応じた運動パフォーマンスの違いを主に以下のように検討した。 (1) 加速度の大きさに応じた音量の音が鳴る装置を手掌部に装着した10名の被験者に,なるべく音がならないように手を動かす往復運動タスクを課した。注意を向ける対象を自身の腕の動き, 手掌部の装置, センサ音,目隠状態でセンサ音と4条件で比較し,注意を向ける対象や得られる感覚情報に応じた運動の変化を検討した。各注意条件間のパフォーマンスの被験者間平均値に有意差は認められなかったが,3名の被験者では目隠条件で肘関節の運動振幅が有意に減少し,パフォーマンスが向上する傾向があった。この結果は,運動生成における視覚情報の影響が大きいことを示唆する。 (2) 10名の被験者が様々なリズムのタッピング動作において,注意焦点の違いがテンポ維持特性,およびタッピング軌道に与える影響を検討した。注意焦点を「手の動き」(内的注意)とした場合と「聴こえてくる音」(外的注意)とした場合ではテンポ維持特性に有意差はなかったが,タッピング振幅は内的注意条件の方が大きくなる傾向があった。 (3) 5名の被験者が短距離走のクラウチングスタートを行う際に,脚運動に注意を払う内的注意と,蹴り出すプロックの音に注意を向ける外的注意のパフォーマンス比較を行った。リアクションタイムについて有意な差はなかった。 (4) 10人の被験者がダーツ投擲運動を行う際に,自身の運動に注意を払う内的注意と,ダーツに注意を向ける外的注意のパフォーマンス比較を行った。的中心からの距離や矢の集合度合いずれにも有意な差はなかった。
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