研究課題
大学での講義や研究活動におけるプレゼンテーションの非言語動作を診断・再構成して、人型ロボットに代講させるシステムの開発・評価を目的に、本年度はプレゼンテーション動作モデルを構築し、ロボット代講およびプレゼンテーションスキル向上支援を実現した。具体的には、次に示す(1)~(3)を実施した。(1)プレゼンテーション動作モデルの構築:プレゼンテーションでの非言語動作としてオーラル、視線、ジェスチャーを取り上げ、関連研究の調査・分析から聴衆の注意制御、聴衆の理解促進などに必要となる具体的な動作を分類した。そして、講義や研究で考慮すべきプレゼンテーション意図をタイプ分けし、意図タイプ(興味の喚起、注意・集中制御、コンテンツ理解)ごとに動作カテゴリ(注意喚起動作、注意誘導動作、理解促進動作など)を対応づけるモデルを構築した。(2)ロボット代講:非言語動作・音声の認識デバイスを用いて、スライド・オーラルコンテンツを含むプレゼンテーションを収録し、非言語動作の認識およびプレゼンテーション意図の同定を通して、(1)で構築したモデルにおける非言語動作と意図との対応関係をもとに不適切・不十分な動作を診断し、より適切な動作となるように再構成するメカニズムを開発した。同時に、代講のための動作シナリオを自動生成するメカニズム、およびシナリオ通りにロボットが代講するメカニズムを開発した。また、評価実験の結果、ロボットが効果的に非言語動作を行えること、および講義内容の理解を促進することを確かめた。(3)スキル向上支援:プレゼンテーションの再構成前後におけるプレゼンタの動作をロボットが再現することで、プレゼンタが客観的に動作改善のセルフレビューを行える環境を構築した。また、評価実験を実施し、ロボットによるプレゼンテーションの再現がセルフレビューを促進できることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
ロボット代講による非言語動作の再構成については、当初の予定通り、評価実験の結果聴衆にとってわかりやすい動作となっていることを確かめることができた。それに加えて、ロボットがプレゼンテーション動作を単純に再現する場合と比べて、動作を再構成することでプレゼンテーションコンテンツの理解を促進することができることを確かめた。これは、非言語動作を再構成するための基盤となるプレゼンテーション動作モデルが妥当であることを示すものである。一方、スキル向上支援については、評価実験の結果、プレゼンテーションの再構成前後の非言語動作をロボットが再現・比較するだけでは、改善すべき点に気づかない場合があることを確認した。このことから、再構成前後における非言語動作の差異を顕在化して支援する必要性を見出すことができた。このように、人間が行うプレゼンテーションでの非言語動作を再構成してロボットに再現させるという独創的なプレゼンテーションエンハンスメントの方法を開発し、その有効性を確かめることができたことから、現在までの達成度を(2)とした。
ロボット代講およびスキル向上支援に関する研究成果を学術論文としてまとめて、公表する。また、本年度明らかにした非言語動作再構成前後の差異を顕在化するメカニズムを開発して、より効果的なスキル向上を目指す。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Foundations and Trends in Smart Learning, Lecture Notes in Educational Technology (LNET), Springer
巻: 2196-4963 ページ: 15-24
10.1007/978-981-13-6908-7_3
https://wlgate.inf.uec.ac.jp/contents/publication/publications.html