研究課題/領域番号 |
18K19844
|
研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
小川 充洋 帝京大学, 理工学部, 准教授 (30322085)
|
研究分担者 |
三上 浩司 東京工科大学, メディア学部, 教授 (10386782)
前田 祐佳 筑波大学, システム情報系, 助教 (20650542)
|
研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
|
キーワード | バーチャルリアリティ / VR酔い / 非侵襲生体計測 / デジタルゲーム / VRディスプレイ / 光電脈波 |
研究実績の概要 |
本研究ではバーチャルリアリティ酔い(VR酔い)の動的検知法の開発およびその応用を目的とする。目的を達成するために、VRディスプレイ埋設型の生体計測とそのデータ解釈により、VR酔いの検知を目指している。計画初年度においては、主として①VRディスプレイに埋設可能な光電脈波計測装置の開発・評価とその改良、②光電脈波から得た脈波時系列の解析による自律神経指標解析アルゴリズムの改良、③VR酔いを引き起こすためのコンテンツ作成のための基礎技術の開発、の3課題について研究を進めた。結果、①についてはVRディスプレイ埋設型光電脈波計測装置によって得られる脈波時系列が耳朶光電脈波による時系列とよく一致することを示した。ただし、開発したVRディスプレイ埋設型計測装置は緑色光を用いたものであり、その情報は皮膚表面付近の動脈血管の情報を反映するものと考えられ、通常の近赤外または赤色光を用いた比較的深部の動脈情報を得る従来の光電脈波との差異について、今後検討する必要があるものと認められた。②については、従来よりも短い時間窓で解析が可能なアルゴリズムを提案、実装した。VR酔いの検知には高速な検知が必要と考えられ、この観点から重要な結果であった。③については、VR酔いの検知実験のために、VR酔いになり易い・あるいはなり難いコンテンツの作成が必要であるために開発研究を進めた。結果、いわゆる前進色と後退色のコンテンツを比較した場合、VR酔いの「引き起こし易さ」に差異があることを示唆する結果を得た。色の変更のみでVR酔いの「引き起こし易さ」を制御する可能性が示され、有益な結果であった。一方、VRディスプレイ埋設型心電図電極からの心電図導出については、現状では困難である。ただし、この困難さは研究計画書においても予想されていたものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね研究計画通りに進展している。とくに、VR酔いを引き起こし易いコンテンツの開発に関しては、色合いの変更だけでVR酔いの「引き起こし易さ」を制御できる可能性が示唆され、当初想定よりも順調に進展していると言える。一方、VRディスプレイ埋設型心電図電極からの心電図導出については、研究計画書において予想していたように困難であって、実現するためには、更なる検討が必要と考えられる。その他の点については、ほぼ計画通りである。以上、総合的に判断して「おおむね研究計画通り」と考えた。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度においては、VRディスプレイ埋設型装置装着時におけるメディア鑑賞やゲームプレイを行い、光電脈波から得た脈波時系列の解析から、自律神経に関する情報を得ることを目的とする。また、VR酔いを引き起こし易いコンテンツ鑑賞時の計測も行い、VR酔いの際の生体情報を計測することを目標とする。また、VRディスプレイ埋設型心電図電極からの心電図導出については、引き続き検討を行う。とくに、作動増幅器の参照電位の制御について検討し、安定した計測を目指す。以上の研究成果を基に、最終年度においては、VR酔いの動的な検知法の提案と、VR酔いの危険性によって内容や演出を変更できるコンテンツの作成を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
物品費については、当初導入予定であったVRディスプレイ装置「HTC VIVE」が、研究開始の2018年夏時点において入手困難であったため、現有のVRディスプレイ装置を用いて研究を進めたため、「HTC VIVE」および当該装置を運用可能なPC整備と、当該装置に埋設可能な生体計測センサ作成のための消耗品費の予算執行を次年度に行うこととし、今年度は執行しなかった。また、人件費・謝金についても、当該装置を用いた計測システム開発作業の次年度持越し、および当該装置を用いた実験を行わなかったため、人件費・謝金を次年度に執行するものとした。次年度において、VRディスプレイ装置「HTC VIVE」またはその次世代装置、および当該装置を使用可能かつ当該装置を用いるコンテンツを開発可能なPCを導入し、当該装置を使用する計測システムを作成して研究を進める予定である。
|