研究課題
本研究では、環境中に放出されていると予想されていた人工放射性ウラン同位体U-233の加速器質量分析による分析方法を確立し、実際に環境試料測定ならびにそれを環境動態解析などの応用に活かすことを目的としている。昨年度までに環境中の極微量U-233が測定可能となり実試料への応用が可能であることが分かった。そこで、2021年度は別府湾から採取された堆積物試料中のウラン同位体組成を測定することで、西部北太平洋への人工放射性ウラン導入史を復元することを目指した。実際に、2gに堆積物を酸抽出および酸による全分解を行い、ウラン精製の後に加速器質量分析でウラン同位体を測定したところ、アトグラムオーダー(10^-18 g)のU-233検出に成功した。これらすべての測定結果として、U-236については1945年から徐々に濃度が増加し、1963年に最大値となった。その後U-236は1980年代にかけて減少する濃度傾向が見られた。一方U-233は1959年に急激な濃度上昇が見られその後1960年代は一定の濃度を保っていた。その後、U-233は急激な濃度減少を見せた。ウラン汚染の起源を示すU-233/U-236同位体比は、1950年代から上昇がみられ1959年に最大値を示した後に徐々に減少した。高エネルギー中性子によってのみ生成されるU-233のシグナル上昇から、1950年代後半から1960年代前半は主として太平洋核実験場で行われた水爆実験の影響を反映しているといえる。このように、人工放射性核種がウラン汚染を特定するための指標として有用である他、堆積物や堆積岩の年代マーカーとして今後長期にわたり利用できることが示された。この結果をまとめて、3月の研究会で発表し投稿論文として執筆された。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
Frontiers in Marine Science
巻: 9 ページ: 1-17
10.3389/fmars.2022.837515
https://trios.tsukuba.ac.jp/ja/researchers/0000003614