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2020 年度 実施状況報告書

積雪の酸素同位体比から復元される気温推定の再考察

研究課題

研究課題/領域番号 18K19851
研究機関名古屋大学

研究代表者

栗田 直幸  名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 准教授 (60371738)

研究分担者 堀内 一穂  弘前大学, 理工学研究科, 助教 (00344614)
赤田 尚史  弘前大学, 被ばく医療総合研究所, 教授 (10715478)
保田 浩志  広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (50250121)
研究期間 (年度) 2018-06-29 – 2022-03-31
キーワード南極観測 / トリチウム / 水安定同位体比 / 大気輸送モデル
研究実績の概要

今年度は、昨年に引き続き、南極観測で採取された積雪試料のトリチウム濃度分析を行なった。東南極の内陸域にあるドームふじ拠点周辺で採取された積雪のトリチウム試料70試料の分析を行なった。また、昨年度から開発に着手した数値モデル開発に引き続き取り組んだ。昨年度に開発した大気輸送モデルに陸面過程スキームを新たに組み込むとともに、格子移流スキーム、積雲対流および大規模凝結スキームの改良をおこない、高解像度実験がおこなえるよう、MPI並列プログラムも導入した。さらに、水蒸気起源解析ができるようタグトレーサー過程、重水素および重酸素といった水安定同位体比の輸送および分別過程を組み込み、トリチウムだけでなく、タグトレーサー実験や水同位体実験も行えるマルチモデルへと進化させた。
この全球水同位体循環モデルにおける同位体比の再現性を検証するために、降水の安定同位体比の観測データ(GNIP)との比較を実施するとともに、南極大陸で採取された積雪のトリチウム分析結果との比較を行い、大陸内部で観測される高いトリチウム濃度を作り出す要因についての解析を行なった。以下にその結果を報告する。
1) 全球の降水分布を適切に再現するように水蒸気移流および降水過程を調整し、土壌水や積雪の同位体比を適切に与えたのちに、降水同位体比の再現実験を行なった。GNIP観測データにみられる緯度分布や大陸分布を適切に再現できており、全球の水輸送を適切に再現できていることを確認した。
2) 第60次南極観測にて採取した積雪試料のトリチウム濃度分布との比較を行なった。沿岸域から内陸域へ向かってトリチウム濃度が高くなるという観測結果を適切に再現することができた。また、トリチウム濃度分布は降水量と関係があり、降水量が少なくなるにつれてトリチウム濃度が高まる傾向があることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

本研究の革新部分は、トリチウムを使った水循環過程の解析手法の確立であり、観測データからトリチウム濃度の実態把握を行うことである。しかしながら、昨年に引き続き、分析装置の故障に見舞われた。新年度がはじまった早々(2020年4月)にトリチウム濃度を計測する分析装置が故障してしまい、試料の分析計画が大きく遅延してしまった。今年は緊急事態宣言の発令中であったことも重なり、修理の完了が12月となってしまった。このため、トリチウムデータが不十分となり、研究成果を国際誌に投稿するに至らなかった。

今後の研究の推進方策

R03年度は、再開したトリチウム分析を早急に完了させて成果発表を行う。数値モデルについては、トリチウム濃度は適切に再現できるが、南極ドームふじ地区における降雪の安定同位体比を過大評価するという問題がある。南極内陸域では、年降雪の約50%が地表面からの昇華が起源であることがタグトレーサー実験から明らかになっており、昇華する水蒸気の同位体比が過大評価になっていると推論している。この問題を早急に改善し、観測データの定量解析に取り組む。そして、その結果を国際会議で発表するとともに国際誌に投稿することを計画している。

次年度使用額が生じた理由

分析装置が故障し、約8ヶ月間分析を行うことができなかった。そのため、分析に使用する消耗品が減少したために使用額と申請額に差異が生じた。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2020 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [国際共同研究] Oulu University(フィンランド)

    • 国名
      フィンランド
    • 外国機関名
      Oulu University
  • [国際共同研究] University of Wisconsin-Madison(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      University of Wisconsin-Madison
  • [学会発表] Application of tritium tracer technique to the partitioning between clear-sky and synoptic precipitation over the Antarctic plateau,2020

    • 著者名/発表者名
      Naoyuki Kurita
    • 学会等名
      The 11th Symposium on Polar Science
    • 国際学会

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公開日: 2021-12-27  

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