研究課題
令和2年度は、特徴の異なる日本の2地点において、拡散荷電法を用いて実環境中粒子のLDSA濃度の測定を行い、同時に粒子をフィルター試料として捕集し、そのサンプルの化学成分分析を行った上で、有害性の指標としてDithiothreitol (DTT) 酸化能と、肺沈着表面積 (LDSA) の関係性を比較検討した。具体的には、横浜 (都市圏) と能登 (非都市圏) の2地点でLDSA濃度の観測および粒子の採取サンプリングを行った。LDSA濃度は、拡散荷電法を原理とするNanoparticle surface area monitorを用いて計測した。観測においては、LDSA濃度に加え、Black carbon (BC) 濃度、粒径分布および化学成分 (能登のみ:ACSM, Aerodyne Research Inc.) を並行して測定した。粒子サンプリングは、QuartzおよびPolycarbonate (PC) の2種類のフィルターを用いて同時に2つの試料を採取した。横浜については2020/9/28-12/20までの期間で12週分のサンプルを、能登については2020/9/20-2021/1/6までの期間で13週分のサンプルを採取した。これらの期間におけるLDSA濃度の平均は、横浜および能登でそれぞれ6.80±3.97, 2.21±1.80 μm2/cm3であった。すなわち, 都市圏の横浜は, 非都市圏の能登に比べて平均して3倍ほど高いLDSA濃度を示した。また、同じ地点においても期間ごとに濃度が変動していた。次に、DTT酸化能の測定結果より、横浜の方が能登よりも粒子の単位質量あたりのDTT酸化能が高い傾向を示した。一方で、LDSAとDTT消費率の関係では、地域によらず一定の傾向が見られた。これより、DTT酸化能に対してLDSAという指標が寄与している可能性が示唆された。
3: やや遅れている
前年に引き続き、国内複数地点において粒子表面積のフィールド観測を実施することができた。さらに並行してDTT酸化能で表される粒子の有害性と、拡散荷電法による肺沈着表面積濃度の関係性を評価する実験も順調に進められた。しかしながら、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、特に能登でのサンプリングに関して、予定していた期間に現地に移動できないことが複数回発生した。これに伴い、サンプル採取と、それに続く実験の実施に遅れが生じた。従って、現在までの到達度を、やや遅れている、と判断した。
今年度も新型コロナウイルス感染症拡大の影響は続くと予想される。当面は室内実験を進めながら、国内(特に能登への)移動が可能になったタイミングを見ながら、フィールドでのサンプルの採取に努める。特に、DTT酸化能とLDSA濃度の関係性に焦点をあてて研究を進める。研究期間を1年間延長したため、可能な限りフィールドのデータ取得を行い、結果をまとめる。成果発表については、国内発表2件、国際学会2件、英文学術誌1件を目標とする。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、実験フィールド現地への移動が制限されたため、サンプル採取計画およびその後の実験の実施計画に予定よりも遅れが生じたため。これに伴い次年度における現地への旅費や関連する実験のための消耗品費等に使用する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Asian Journal of Atmospheric Environment
巻: 15 ページ: 52~67
10.5572/ajae.2020.072
https://www.applc.keio.ac.jp/~okuda/research/theme/surface_ice.html