研究課題/領域番号 |
18K19858
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
島田 幸治郎 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (70707190)
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研究分担者 |
茶谷 聡 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 主任研究員 (40394837)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | メガシティー / 大気環境問題 / 反応場 / 舗装道路 / 揮発性有機物質 / 光分解 |
研究実績の概要 |
本研究では、大気汚染物質の未考慮の「反応場」に注目し、都市大気中に存在するほとんどの有機エアロゾルが最終到達点となる舗装道路表面での化学反応に注目して行っている。舗装道路表面は多くの化学物質が沈着していると考えられ、なおかつ大気より高温になるため、化学反応が促進される舗装道路表面を新しい重要な反応場として提案することを目的としている。早稲田大学、西早稲田キャンパスの明治道路沿いにおいて2018年―2019年の冬季に、アスファルトを用いてエアロゾルを沈着させる環境試料の採取を行った。このアスファルトの試料を自作したチャンバー内で、高温下で紫外線を照射することで、有機エアロゾルが光分解され揮発性有機物(VOC)が発生するかどうかを調べた。VOCの分析はプロトン移動反応質量分析計(PTR-MS)を用いて分析を行った。その結果、発生したVOCは光化学スモッグの原因物質であるオゾン生成への寄与が高い、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドなどアルデヒド類を中心としたVOCが生成していた。さらに、紫外線の照射強度を一般的な夏季と冬季に観測される強度に設定し、アスファルトから放出されるVOCの放出速度を比較したところ、夏季に設定した紫外線強度の方が、VOCの放出速度が冬季に比べて高くなった。またアスファルトに熱を加えて温度を上昇させると、さらにVOCの放出速度が上がっていた。一方で、エアロゾルが沈着していないアスファルトに紫外線を照射すると、そのアスファルトからもVOCが発生した。このとき、エアロゾルが沈着したアスファルトからのVOCの放出速度を比較したところ、エアロゾルが沈着したアスファルトからのVOCの放出速度が高かった。このことから、舗装道路表面がVOCの発生するための反応場になっていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
舗装道路表面がVOCの発生するための反応場になっているデータが蓄積されてきているので、当初の研究計画について概ね達成されている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年の夏季にも冬季と同様の方法で環境試料を採取し、放出速度の算出をする実験を行う。 自作したチャンバー内で1日における紫外線と温度の周期を短時間スケールで再現をして、日内におけるVOCの放出速度を算出する。その後、ボックスモデルを用いて東京都23区内の舗装道路で発生するVOCが、オゾン生成へどの程度寄与しているのか試算を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に使用する機材を変更する必要があり、その機材の購入が当該年度内に完了しなかったので、次年度に購入することになったため。
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