研究課題/領域番号 |
18K19862
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
相田 真希 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 技術主任 (90463091)
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研究分担者 |
石井 励一郎 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 准教授 (40390710)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 同位体効果 / アミノ酸組成 / 食物連鎖 / 海洋生態系 / 代謝理論モデル |
研究実績の概要 |
栄養段階に伴うδ15N及びδ13Cの濃縮の変動について、捕食者の生理状態、餌と捕食者の筋肉のアミノ酸組成の差、この2つの要素に着目し、①成魚を用いた飼育実験、②代謝理論モデルによる検証、に着手した。 ①飼育実験:2018年度(平成30年度)は、魚種の選定作業および実験期間や餌調合について研究協力者(水産研究・教育機構 杉崎氏および水産研究・教育機構 瀬戸内海区水産研究所 米田氏)と相談しながら準備を行った。飼育実験の魚種選定にあたって、成熟ステージによる同位体比のバラつきを除外するために成魚で実験可能なこと、また給餌実験時に複数個体の同位体の体組成比を揃えることが可能な飼育魚であること、数か月から1年程度の給餌実験が行える飼育環境が整っていること、以上の要素がクリアできる魚種を慎重に選定した。検討した結果、本科研費内に給餌実験が複数回行え、且つ同位体に対するターンオーバータイムが異なると考えられる2つの魚種、カタクチイワシ(ターンオーバータイムが1~2か月程度と比較的早い)、マイワシ(カタクチイワシに比べ、ターンオーバータイムが数か月程度と長い)を用いて給餌実験を行うことにした。給餌実験の前準備として、搬入したイワシの同位体比の組成比を揃え、さらに成熟・産卵ステージを除外する必要があるため、2019年度(令和元年度)秋季から本実験を開始することとした。なお、給餌実験は、水産研究・教育機構 瀬戸内海区水産研究所にて、米田氏の研究協力のもと実施する。 ②代謝理論モデル:代謝系のダイナミクスと炭素・窒素同位体効果についてタンパク質合成・分解素過程の代謝理論モデルを用いて、同位体濃縮効果の生理的理論値の推定と同濃縮率が成長速度、餌のC/N比などの生育条件に対して受ける影響の感度を推定するモデルの開発を行った。2018年度(平成30年度)は窒素同位体比に関する代謝モデルの開発を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
魚種の選定作業が難航したため、給餌実験の開始時期が当初予定していた時期よりも半年程度遅れた(当初予定では、2018年度(平成30年度)末には、最初の実験を行う予定であった)。しかし、ターンオーバータイムが異なる2魚種(カタクチイワシ、マイワシ)を選定し、さらに同位体比の再現性をに関して極めて良い実験環境が確保できたこと、イワシ類の給餌実験に関し熟達した研究者の研究協力を得られたことは、代謝理論モデルの比較検証にも有意義であると考えている。給餌実験は、やや遅れているものの、代謝理論モデル開発は予定通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
①飼育実験:同位体比に関してターンオーバータイムが異なると考えられるマイワシ、カタクチイワシを用いた給餌実験を、成熟・産卵ステージ期間外となる2019年度(令和元年度)秋季から実施する。そのための前準備として、個体の体組成比をそろえるための飼育を現在進めている。給餌実験では、異なる配合飼料を用いた感度実験などを行うことにより、対象魚種の筋肉中の同位体組成の調査解析を行う。 ②代謝理論モデル:窒素同位体比と共に炭素同位体比に関する代謝モデル開発を進める。開発したモデルを用いて、同位体濃縮効果の生理的理論値の推定と、同濃縮率が成長速度や生育条件(餌の組成の違いなど)に対して受ける影響の感度を推定し、給餌実験結果の説明要因の妥当性について検証する。 また、実験データの複数回の取得と、理論モデルを用いた検証を実施したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
飼育実験の魚種選定作業に難航したため、当初計画していた物品購入や旅費、その他経費を使用することが出来なかった。2019年度(令和元年度)は飼育実験を行う計画であり、前年度未使用の助成金を執行する予定である。
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