研究課題/領域番号 |
18K19866
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松井 佳彦 北海道大学, 工学研究院, 教授 (00173790)
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研究分担者 |
白崎 伸隆 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (60604692)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 土木環境工学 / 環境技術 / 環境材料 / 反応・分離工学 / 水資源 |
研究実績の概要 |
水問題解決として期待され、膜分離技術、特に凝集などとの組み合わせによる処理全体の高効率と省エネルギー化を目指した新浄水処理法の研究が世界中で活発に行われている.特に,膜分離の最大の課題はろ過にともない膜が汚れ(ファウリング),膜ろ過抵抗が増大することであるため,これを効率的に抑制する方法が検討されている.その一つとして塩基度が70%で硫酸イオンを数%含むアルミニウム系凝集剤の使用が提案されている.この研究では,安定同位体を用い,使用済み膜の汚れの分布を可視化定量し,膜ファウリングの解明により効果的なろ過法を検討する.同位体元素で標識ラベルした凝集剤などを製造すること,同位体比の時間的安定性,同位体顕微鏡における解析感度と空間解像度などを検討する.さらに,これらを膜ろ過し,膜のどこに堆積したかを調べる. 本年度は,重水中で作成した凝集剤の重水素の安定性を検討した.その結果,凝集剤としては重水素比が高い凝集剤を作成できたが,凝集フロックを生成すると比が低下して行くことが分かった.水素/重水素は構造末端にあるため容易に置換されやすいことが分かった.そこで,18O標識のラベル安定性を,活性炭を例にして検討した.活性炭を重水と18O水をともに含む水中で粉砕し,活性炭の炭素と反応し,活性炭に移行した重水素と18Oを定量した.その結果,18Oは活性炭を乾燥後もその比は高く,移行率が60%であった.これに対し,重水素の比は上昇しなかった.このことから,ラベル化には18Oはより適していることが分かった.一方,凝集剤として反応する膜ファウリング物質であるバイオポリマーのラベル化にも着手した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
凝集剤の重水素ラベル化可能であるが安定性が低い.そこで,18Oラベル化の可能性を見出した.一方,凝集剤と反応する膜ファウリング物質であるバイオポリマーのラベル化にも着手し,多角的な検討を行っている.
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今後の研究の推進方策 |
18Oラベル化した高分子アルミニウム系凝集剤の調整と,その安定性を検討する.重水素標識したグルコースで活性汚泥微生物を培養し,凝集剤と反応する膜ファウリング物質であるバイオポリマーを作成する.これらを使って膜分離実験を行い,どこで膜ファウリングが生じているのかを検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
同位体ラベル化に傾注した検討を行ったため,費用のかかる同位体測定は次年度に重点的に行う予定である.
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