浄水などの水処理における膜ろ過ではろ過とともに膜がファウリングし透水性が低下する.そこで膜内部のどこでファウリングが生じているかを検討するために,ファウリングした膜を観察する方法を検討した.まず,ファウリングした膜に重水を通水し,ファウリング物質を重水素(2H)で置換・ラベル化し,同位体顕微鏡システムを用いて2Hの観察を試みた.しかし,安定的な結果は得られなかった.2Hによる置換が生じるが,その後,短期間の保存によっても1Hによる再置換が生じ,重水素置換の安定性に問題があったと思われる.そこで,膜ファウリング物質である自然由来または排水由来の有機物に含まれる窒素14Nの着目し,14Nを15Nで置換することで観察が可能かを検討することとした.これまで活性炭粒子については,同位体ラベルした2-メチルイソボルネオ―ルやポリスチレンスルホン酸ナトリウムを吸着させるとそれらがどこに吸着しているかの観察実績がある.そこで,15Nでラベル化したEfOM(排水有機物)を活性炭粒子に吸着させ,同位体顕微鏡システムで観察することとした.その結果,EfOMを吸着した活性炭の15N/14N比は,EfOMを吸着してない活性炭に比べて十分に高く,活性炭粒子内の15N/14N比の分布も観察された.EfOMは膜ファウリング物質であることから,15Nでラベル化したEfOMを含む試料水を用いで膜ろ過を行えば膜ファウリングの観察が可能と思われる.
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