研究課題/領域番号 |
18K19867
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
田中 伊知朗 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (20354889)
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研究分担者 |
新村 信雄 茨城大学, フロンティア応用原子科学研究センター, 特命研究員 (50004453)
菊地 賢司 茨城大学, フロンティア応用原子科学研究センター, 特命研究員 (70354769)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 放射性Cs / 経済的除染 / 福島第一原発事故 / 存在様式 / 高温安定 |
研究実績の概要 |
9年前の2011年3月、東日本大震災によって引き起こされた福島第一原発の事故は、現在でも解決しなければならない課題が多く残されている。先行研究によって、土壌の水溶性実験や走査型電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分析などが行われた結果から、Csが多数の金属元素とともに検出され、その混合物として、顆粒状の粒子であることが推測されている。このような汚染土壌に対して物理的外力をかけて荒く粉砕し、顆粒状の放射性Csを多く含む成分を濃縮・分離することが出来れば、経済的な除染が可能であると考え、より定量的に行うことを目的とした。 2018年度は、電気炉により約300℃で30分乾燥させた後、ジョークラッシャで0.4mm破砕の有無の2種類の試料を用意し、JIS規格の2.0mm、 0.5mm、 0.15mmのふるいを用いた、ふるい振とう器で粒径によって分離した。その結果、粉砕無のものは0.5mmに半分前後、粉砕有のものは0.15mmとそれを通過した受け皿にたまった土壌の放射能が元の1.5倍程度の濃度となり、この方法の有効性が確認できた。 2019年度は、約400℃で1時間乾燥させた後、同様に荒く粉砕すると、0.15mmのふるいを通過した受け皿に、約1.9倍のより高濃度の放射性Cs汚染土壌を濃縮することができた。また、400℃の高温乾燥前後のふるい分け前の放射能が等しかったことから、放射性Csはこの程度の高温でも安定して存在していることを示す証拠が得られた。これは、これまでの先行研究結果と総合して、融点が数百℃以上のSiO2ベースのガラス(アモルファス)状の構造中に放射性Csが安定して取り込まれている可能性を直接的に示唆し、経済的な除染方法の糸口になることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放射性Cs土壌の高温安定性が確認できたことと、濃縮分離に関してある程度方向性を示せたから。
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今後の研究の推進方策 |
乾燥温度、時間、粉砕方法、ふるいの条件を最適化し、より効率的な濃縮除染条件を精密化する。また、エネルギー分散型X線分析による元素分析と形状観察、より高温でのCsの安定性をより詳細に検証するとともに、生物界への汚染の原因となる溶解(イオン化)に関する考察も進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス蔓延のため、参加予定の研究会が中止されたから、次年度使用額が生じた。PC関連や試料容器などの消耗品に使用する予定である。
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