研究課題/領域番号 |
18K19867
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
田中 伊知朗 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (20354889)
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研究分担者 |
新村 信雄 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 特命研究員 (50004453)
菊地 賢司 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 特命研究員 (70354769)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | 土壌除染 / 熱処理 / Cs溶出実験 / 経済的除染 |
研究実績の概要 |
福島原発放出された放射性Csには、ケイ酸塩鉱物中に放射性Csが含まれている存在様式と多数の元素で構成されるシリカ系非晶質中に放射性Csが含まれている存在様式の2つが提案されていて、2020年度までに、土壌中に上記2つの混在が確認できたことを報告している。これらの放射性Csは熱安定性が高いことが予想される。そこで、高温乾燥した汚染土壌に含まれる放射性Csの溶解性の調査と、Si系化合物が溶解する条件でCsを取り出すことを狙って、汚染土壌に含まれる放射性Csの塩基性水溶液への溶解性を確認した。 本研究では福島県南相馬市で採取した土壌を使用し、電気炉を用いて900℃の高温で乾燥させる実験を行い、簡易ベクレル計による乾燥前後の放射能変化から放射性Csの熱安定性を調査した。さらに、振とう機とフィルター径0.5μmのガラス濾紙を使用し、土壌と水溶液を振とう・ろ過する実験を行い、土壌に含まれる放射性Csの溶解性を調査した。 まずは高温処理を行わない純水による振とう実験では、振とう前に測定された放射能の約0.5%の割合で、放射性Csがフィルターを通過したことが判明した。2014年ごろ行われた同様の実験では、0.05%だったことから、約10倍溶解したことを示すが、これは、時間が経過し、風化が進んだことを示唆している。また、同様に高温処理していない土壌をpH9.4の1M酢酸ナトリウム水溶液や1MのKCl水溶液による振とう実験では、0.76%及び2.12%の放射性Csの溶解があり、塩基性溶液よりもKClの方がより溶解させることが分かった。次に、900℃までの高温処理した土壌と未処理の土壌の純水に対する溶解度を調べたところ、それぞれ0.77%と0.64%でほとんど差が出なかった。先行実験の焼却灰と異なり、高温処理と未処理の差がなかったのは、焼却という酸化がない状態での加熱が原因の可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの成果から、高温処理も含めた土壌の溶解実験に進行できているから。
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今後の研究の推進方策 |
さらなる溶解実験の実行と、フィルターの違いによる放射性Csの溶出の違いなどを比較する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス蔓延のため、外部発表の学会がオンライン開催となり、旅費が生じなかったため、次年度使用額が生じた。残りの実験と成果とりまとめに使用する予定である。
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