研究課題
トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)によって引き起こされるトキソプラズマ症は、ネコ科動物を終宿主とし、ほとんどすべての温血動物が中間宿主となる感染症である。場合によってはヒトにも重篤な症状が現れることがあるため、リスクの所在を把握し、感染を未然に防ぐ必要がある。本研究では、ノネコとクマネズミのトキソプラズマに対する抗体レベルをELISAで調べ、絶滅危惧種がノネコの捕食によって脅かされている徳之島の景観環境要因との関係を調べた。牛舎の密度が高い風景では、ノネコとクマネズミの両方で血清有病率が高いことがわかった。これは、この島でのノネコ分布の知見と、クマネズミの密度が牛舎周辺で高いことを示すトラッピング調査と一致していた。感染に影響を与える景観要因の空間スケールは、クマネズミよりもノネコの方が広かった。ノネコのパフォーマンスが最高の統計モデルでは、捕獲地点の周囲に1 kmのバッファ半径の景観要因であったが、クマネズミの統計モデルでは半径は100mだった。この空間スケールの違いは、これらの種の間で報告された行動圏サイズの違いとほぼ一致していた。ノネコとラットの両方が、体重と景観牛舎密度の増加に伴ってOD値の増加傾向を示したことは、環境中のトキソプラズマへの曝露の可能性が増加するにつれて抗体濃度が増加することを示唆している。したがって、人間がノネコに餌をやるのを止め、ネズミの個体数を制御するための管理措は、人間の健康リスクを減らし、島の絶滅危惧種を保護するために必要である。
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