研究課題/領域番号 |
18K19879
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
濱村 奈津子 九州大学, 理学研究院, 准教授 (50554466)
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研究分担者 |
光延 聖 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (70537951)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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キーワード | 微生物金属代謝 / レアメタル / アンチモン |
研究実績の概要 |
当該年度は、アンチモン代謝能を有する微生物複合系について継続培養を実施したところ、構成種2種でも活性が測定されたことから、これら構成種の分離培養株の取得を試みた。特に、これまでに分離できていない構成種の系統的近縁株は腐植物質の構造類似物質であるAQDS (anthraquinone-2,6-disulfonate)を還元することが報告されていることから、同様にAQDSを指標物質とした培養を実施した。現時点では本株は分離できていないが、共存株は分離に成功しており、本共培養系のゲノム情報をロングリード配列解読が可能な次世代シーケンサーにより解読することとした。また本解析に先行し、共存株の近縁種についてはすでにゲノム配列が決定されていることから、データベースに登録されている近縁種のゲノム配列も含めて比較解析し、アンチモン代謝に関与していると予測される遺伝子配列の検索を実施した。その結果、これまでにアンチモン代謝酵素として同定されているアンチモン酸化酵素(Ano)およびヒ素酸化酵素(Aio)と相同性の高い配列は検出されておらず、新規な代謝機構による可能性が示唆された。また、アンチモン代謝活性を示す混合微生物系として、それぞれ2、3、4種の異なる構成種を含む系が得られており、それらの主要な構成種の多くもすでに培養済みである。したがって、今後これら構成種と複合系を用いて、アンチモン代謝活性を促進する混合微生物系の解析を進める準備も整っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、アンチモン還元能を有する複合培養系から構成種の分離培養および分子系統的同定を行い、さらにゲノム配列情報に基づく代謝機構の推定を実施した。複合系のゲノム解析については、コンプリートなゲノムが得られる可能性の高いロングリードでの次世代シーケンス解析が望ましいと判断したため、当初予定していた当該年度中には実施できなかったが、すでに適切な培養系も得られており、今後速やかな実施に向けた準備も整っている。また、当初計画では次年度に予定していた異なる構成種によるアンチモン還元代謝の最適化については、すでに実施可能な系を確立しており、順調に活性比較を実施することができる。これらの結果から、概ね当初の目的に沿って順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画していたアンチモン還元能を有する複合培養系の構築および構成種の分離株が順調に得られており、分子系統学的な同定も実施済みである。今後は、未だ分離培養ができていない構成種を含む共培養系についてゲノム解読を実施するとともに、金属代謝に関与する遺伝子群の検索を行う。さらに、アンチモン還元条件下で特異的に発現している遺伝子群をトランスクリプトーム解析により定量的に検出し、これら金属代謝遺伝子のアンチモン代謝への関与を推定し、アンチモン代謝経路に関与する機能遺伝子群を同定する。また、アンチモン代謝活性を示す混合微生物系を用いて、アンチモン代謝活性と結晶化を駆動する微生物種の同定を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた複合系のゲノム解析については、コンプリートなゲノムが得られる可能性の高いロングリードでの次世代シーケンス解析が望ましいと判断したため、より構成種の限られた複合微生物系の構築を実施したことから、次年度使用額が生じた。次年度は当初の計画に沿って、ゲノム解読をすみやかに実施する。
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