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2018 年度 実施状況報告書

ウッドルフ鉱微結晶の微生物生成系を利用した坑廃水処理技術への挑戦

研究課題

研究課題/領域番号 18K19880
研究機関秋田県立大学

研究代表者

宮田 直幸  秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (20285191)

研究分担者 岡野 邦宏  秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (30455927)
藤林 恵  秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (70552397)
研究期間 (年度) 2018-06-29 – 2020-03-31
キーワード坑廃水 / マンガン酸化細菌 / マンガン酸化物 / バーネス鉱
研究実績の概要

青森県内の旧鉱山坑道内の廃水路において、水質測定及び底質試料の採取を行った。調査した坑廃水の性状として、pH 6.6~6.7、水温15~16℃、DO 3.1~5.8 mg/L、溶存Fe、Mn、Znをそれぞれ 0.1~0.4 mg/L、22~27 mg/L、6.4~8.2 mg/L含有していた。一般的に、これらの濃度レベルでMnおよびZnイオンが含まれる培養液ではマンガン酸化菌の活性は大きく阻害されるが、水路内では黒色のマンガン酸化物が堆積し、マンガン酸化が進行していた。マンガン酸化物はナノシート構造をもつバーネス鉱様または含亜鉛マンガン酸化物鉱物であるウッドルフ鉱様で、マンガン酸化物中には亜鉛がMnに対するモル比で10~20%含まれていた。
底質試料から全DNAを抽出し、16S rRNA遺伝子をPCR増幅後(515F/806Rプライマー)にアンプリコン解析を行い、微生物群集構造を調査した。その結果、鉄、硫黄、メタン、窒素化合物の循環に関与すると推察される多様な細菌および古細菌が検出された。また、以前に代表者が別の環境試料から分離したマンガン酸化細菌(U9-1i株)とよく一致する配列が検出された。
さらに、マンガン酸化菌の分離を試みた結果、この配列を有するマンガン酸化細菌が分離され、坑廃水中のマンガン酸化に関与している可能性が示された。U9-1i株を用いた培養試験によって、本菌のマンガン酸化活性は高濃度Mnイオンおよび低濃度Znイオン等により強く抑制されることが示された。しかし、予め低濃度Mnイオンを含む培地で繰り返し培養しておくと馴養的な効果が現れ、高濃度MnイオンやZnイオンの存在下でもマンガン酸化が進行することが明らかになった。このため、坑廃水路内でも同様の効果により生物的なマンガン酸化反応が進行している可能性が考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

坑廃水路中で生成するマンガン酸化物の性状とマンガン酸化細菌の関与について明らかにした。さらにモデル微生物(U9-1i株)を用いた培養試験により、マンガン及び亜鉛の共存下でもマンガン酸化が進行し得るとの新しい知見を見出したことから、坑廃水内でのマンガン酸化物生成過程について、当初の目標を十分に達成する成果が得られている。
微生物群集構造の解析では、坑廃水路内の微生物生態として、鉄、硫黄、メタン、窒素化合物の循環機能をもつこと、U9-1i近縁種がマンガン酸化細菌の一つとして働いていることが示唆され、坑廃水の元素循環に関与する微生物群集を特徴付けることができた。このことから研究は順調に進んでいると考えている。

今後の研究の推進方策

有機物の外部供給がほとんどない坑廃水路内において、従属栄養性のマンガン酸化細菌を含む微生物群集がどのような炭素フローをもつのかを明らかにすることは極めて重要な課題である。このため、微生物群集における炭素の供給源の解析を進める。
また、ラボスケールの接触酸化型バイオリアクターを構築し、模擬坑廃水または実廃水を連続流入させて除マンガン処理に及ぼす運転条件(滞留時間、金属イオン濃度、炭素源添加の有無)の影響を解析する。槽内で生成するマンガン酸化物の構造特性を解析するとともに、微生物群集構造も調査する。最後に、坑廃水中におけるウッドルフ鉱微結晶の微生物生成系に関して研究総括するとともに、水処理への適用性を評価する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2019 2018

すべて 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件)

  • [学会発表] マンガン含有坑水処理に向けた微生物活用の取組み2019

    • 著者名/発表者名
      宮田直幸,岡野邦宏,藤林恵,小原義之,長安孝明,福山賢仁
    • 学会等名
      資源・素材学会平成31年度春季大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 高濃度マンガン及び亜鉛等重金属存在下におけるマンガン酸化細菌のマンガン酸化特性2019

    • 著者名/発表者名
      宮田直幸,岩崎瑞生,岡野邦宏,藤林恵,瀧寛則,根岸昌範
    • 学会等名
      第53回日本水環境学会年会
  • [学会発表] 微生物を利用したマンガン含有坑廃水処理の取組みと課題2018

    • 著者名/発表者名
      宮田直幸
    • 学会等名
      平成30年度資源・素材関係学協会合同秋季大会(資源・素材2018)
    • 招待講演
  • [学会発表] マンガン含有鉱山坑廃水中における生物学的マンガン沈積過程の解析2018

    • 著者名/発表者名
      宮田直幸,岡野邦宏,菅沼玲奈,藤林恵
    • 学会等名
      日本水処理生物学会第55回大会

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公開日: 2019-12-27  

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