本研究課題では,環境毒性学にAdverse Outcome Pathway(AOP)の概念によるリスク評価・管理システムを導入するためのモデル生物による環境毒性AOPの基盤構築を行うことを目的とした. メダカ卵への取り込み暴露試験を行いフェノタイプ解析およびトランスクリプトーム解析を行った.フェノタイプ解析においては浸透法と高電界パルス法の比較も行った.PFOSおよびPFOAは浸透でも長期間暴露すると取り込みが起こり,200uMで両物質ともに発生の遅れなどの異常が60%以上で観察された.一方,高電界パルス法では,さらに低濃度で奇形個体が観察されたことから,効率よく化学物質導入が行えることが確認できた.また,高電界パルス法で導入を行った群では,目・体形成が著しく異常な個体も現れ,メダカの発生に有機フッ素化合物は影響を及ぼすと考えられた.一方,胚(6dpf)のトランスクリプトーム解析では,PFOSおよびPFOAの両物質において,SNARE interactions in vesicular transport,Metabolic pathways,mTOR signaling pathwayおよびFoxO signaling pathwayが共通するパスウェイとして影響を受けていることが明らかとなった.これらは,細胞の増殖および分化制御に関連しているパスウェイであり,PFOSおよびPFOAが導入されることでこれらパスウェイが影響を受け,奇形発生が引き起こされたと考えられた.またPFOSでは物質の膜輸送に関わるABC transportersなどのパスウェイが,PFOAでは異化に関与するPyrimidine metabolismなどのパスウェイがそれぞれ特異的に影響を受けていることが明らかとなった.現在,フェノタイプとそれに関連するパスウエイについて検討を行っている.
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