研究課題/領域番号 |
18K19887
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
宮本 直樹 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (00552879)
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研究分担者 |
高尾 聖心 北海道大学, 大学病院, 助教 (10614216)
富岡 智 北海道大学, 工学研究院, 教授 (40237110)
梅垣 菊男 北海道大学, 工学研究院, 教授 (40643193)
清水 伸一 北海道大学, 医学研究院, 教授 (50463724)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 3次元イメージング / リアルタイムイメージング / 体内ランドマーク / 変形レジストレーション / 医学物理 |
研究実績の概要 |
提案手法では、生体内の代表点を表すランドマーク位置、および生体表面を同時に、リアルタイムで測定し、あらかじめ構築しておいた数理モデルに基づき、そのタイミングにおける生体内の変形量を推定する。得られた変形量を基準アトラスデータに適用することで、生体内の三次元データをリアルタイムで得ることが可能になる。本研究の推進により、生体内部情報をボリュームイメージデータとしてリアルタイムで得ることが可能となり、医療、生命科学研究において大きなインパクトをもたらすと期待できる。 平成30年度は、基本アルゴリズムの開発を目的として、(a) アトラスデータベースの構築、(b) ランドマークデータベースの構築、(c) 生体表面を考慮したレジストレーションの基盤技術開発、および(d) 内部ランドマークと生体表面情報から変形量を推定する数理モデルの検討、を実施した。(a)については、比較的変形の大きい肺の領域に着目し、肺の体幹部定位放射線治療ケースを対象にして、臨床で得られたCT データを収集し、呼吸運動に応じて分類したデータベースを構築した。(b)については、(a)の治療ケースを対象に、体内マーカ位置をランドマーク位置として収集するとともに、複数のランドマークの動きの主成分解析をおこない、数理モデルの構築に必要となるデータベースを構築した。(c)については、2 つの三次元CTデータおよび各CT から抽出した生体表面情報から変形ベクトルフィールドを算出するプログラムを開発した。(d)については、離散的なランドマーク位置座標および生体表面情報の線形結合として、変形量を推定するモデルを構築した。開発したリアルタイム合成技術の画像合成精度の検証をおこない、現在利用されている変形レジストレーションと同等の精度で画像を合成できることを確認した(第116回医学物理学会にて報告)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基本的に申請時の実施計画に沿った研究開発を進めており、ほぼ想定通りの結果が得られていることから、現在までの研究開発の達成度は、おおむね順調に進んでいると自己評価した。平成30年度は、(a)約30名の肺の体幹部定位放射線治療を対象に、4次元CTデータ、および呼気止めCTデータを含むアトラスデータベースを構築するとともに、(b)体内に留置されたマーカの呼吸による運動データのデータベースを構築し、体の領域毎の動きの主成分分析を行った。これらデータを活用することで、効率のよい開発と検証を進める体制を整備することができた。続いて、(c)変形レジストレーションによるCT画像同士の変形フィールドを算出するプログラム、およびCT画像からランドマークの位置情報を抽出するプログラムを開発した。(d)得られた体内変形量をランドマーク位置情報から推定する推定モデルを検討した。初期検討として、体内ランドマークの位置変位と周囲の変形量が線形であると仮定し、7例を対象にして合成画像の精度を評価した結果、参照CT画像と合成CT画像の差分値が100 HU以下となり、一般的な変形レジストレーションと同等の精度であることを確認した。体内ランドマークから離れた領域においては画像合成精度が低下しており、これは、ランドマークの位置変位と体内で生じる変形との間に位相差があることなどが考えられ、今後、推定モデルを改良していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現時点で、基本的な画像合成アルゴリズムを開発済みであり、今後は、画像合成精度を高めるために改良を進めるとともに、リアルタイムでボリュームデータを合成するために、処理の高速化を図る。具体的な高速化手法としては、領域毎に解像度を柔軟に変えるマルチグリッド方式を検討中であり、リアルタイムで(1 秒間に10 回程度)変形量を推定し、ボリュームイメージを合成することを目指す。このため、高速演算用のGPUを導入する予定である。開発した技術の推定精度およびリアルタイム性を定量評価する。また、開発技術の応用分野の1つとして、放射線治療におけるリアルタイム照射位置検証を想定しており、その実行可能性を評価する。開発技術により、体内マーカのリアルタイム計測位置をもとにして体内ボリュームイメージを合成し、リアルタイムで治療ビームのパス上の体内構造を評価することが可能となる。照射時の体内構造と治療計画時の体内構造とで大きな差異が生じた場合は照射を中断するなどが可能になり、これにより、放射線治療における安全性と精度を飛躍的に高めることができる。がんの動きの問題から従来は治療を避けていた部位においても治療が可能となるなど、がん治療における大きなブレークスルーとなると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
データベースの構築において、一部のデータ収集を自動化することで作業効率が向上し、より多くのデータを収集できる見込みをえた。そのため、初年度に予定していたデータ収集補助用の費用(人件費20万円)を、データ保存用ストレージの導入費用に変更することを検討した。機器選定を進めており、次年度始めに導入する予定である。
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