研究課題/領域番号 |
18K19894
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
吉野 大輔 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80624816)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 低温プラズマ反応流 / 沿面放電 / コラーゲン / 接触角 / 表面張力 / 水素結合 / 荷電機構 / 細胞接着力 |
研究実績の概要 |
本研究では、低温プラズマ反応流によるタンパク質溶液の荷電機構を解明し、高い組織接着性と細胞増殖性を有する斬新な医療用接着剤の臨床展開を目指している。 2019年度は、低温プラズマによるコラーゲン溶液の荷電機構の解明と細胞・組織接着機構の解明に取り組んだ。プラズマ処理を施したコラーゲン溶液を疎水性カバーガラス上に滴下した結果、処理を施さない場合と比較して接触角が有意に減少することが明らかになった。また、超純水、コラーゲン溶液の溶媒である酢酸、コラーゲン溶液についてプラズマ処理ありと無しの場合で接触角の経時変化を行ったところ、超純水においても一時的な接触角の減少が観察され、コラーゲン溶液においては接触角の減少の程度がより大きくなることがわかった。この接触角の変化について、プラズマによる溶液の荷電機構に基づいて考察すると、プラズマにより過剰な電荷が供給され水分子同士の水素結合に一時的な変化に伴う表面張力の変化が主要因であることがわかった。また、プラズマ処理によってコラーゲン分子の分子量が減少する可能性を示唆する結果も得られた。プラズマ処理による溶液中の化学種生成について、吸光度測定による濃度計測も合わせて行ったところ、硝酸・亜硝酸については共に検出下限を下回っており、過酸化水素については0.4 mg/L程度であることがわかった。 細胞・組織の接着機構の解明については、接着力評価のための試験機の設計を行った。試験機の製作途中で代表者の機関異動があり、新たな所属機関において実験室の立ち上げに時間を要したため、細胞・組織の接着機構の解明については年度終了までに計画通り完了することができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年10~11月に代表者の機関異動があり、新たな所属機関において実験室の立ち上げに時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、プラズマ荷電タンパク質溶液を修飾した表面への細胞接着機構を時空間的観察に取り組み、これまで明らかにしたタンパク質溶液の荷電機構、培養基材への修飾メカニズムと合わせて、細胞接着機構の詳細を明らかにする。これと並行して細胞シートの多重積層による人工皮膚組織の製作方法を確立し、設計した接着力評価のための試験機を立ち上げることで、プラズマ荷電タンパク質溶液による組織接着機構の解明に着手する。
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