体重の16%を占める最大臓器である「皮膚」は,体内の恒常性維持を担う生命の根幹である。近年,体水分の蒸散を制御するバリア機能に加えて,温度・光・圧力などを感知して応答する自律的な機能が注目されている。これらの刺激に対する皮膚応答を,表皮層のイオン構造(イオン局在)に対応付ける「皮膚イオニクス」を探求し,神経・筋肉系で確立を遂げた電気的な計測・制御(診断・治療)の技術体系を皮膚に展開する新分野「皮膚イオニクス医工学」の開拓に挑むのが本研究である。そのために,「表皮電位」を刺激応答の最中に計測するin-situ技術の開発に挑戦し,生化学的な手法に依存する従来の皮膚科学を電気的手法の導入で革新し,未解明な皮膚機能のイオニクスに迫った。具体的には、独自開発した表皮電位の計測プローブを基盤とし,このプローブへ光刺激・機械刺激・電気刺激の印加機能を搭載してin-situ計測を可能とし,皮膚の刺激応答を表皮電位の変化に関連付けて解析した。実験にはブタ皮膚切片を用いた。表皮電位の計測プローブは、従来の表皮電位の計測には電極対を皮膚の表・裏に配置する補法とは異なり、テルモ無痛針をガイドに利用した「マイクロ塩橋」によって皮膚下への低侵襲な電極配置を実現し,皮膚局所の表皮電位を計測可能なプローブ型デバイスとしたものである。さらに、このプローブに光ファイバを搭載することによって、皮膚局所での表皮電位の光応答を計測し解析することが可能になった。
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