研究課題/領域番号 |
18K19900
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮田 完二郎 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (50436523)
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研究分担者 |
岸村 顕広 九州大学, 工学研究院, 准教授 (70422326)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 中空粒子 / RNA / エクソソーム |
研究実績の概要 |
細胞外小胞の1種であるエクソソームは、分泌細胞特有の成分を含むことから、がんなどの診断用バイオマーカーや再生医療における生理活性メディエーターとして期待されている。その一方で、免疫原性などの予期せぬ副作用、大量生産・品質管理の難しさなどが生体由来物質の避けられない課題として残される。そこで本研究は、簡便な材料・調製法を用いた「人工エクソソーム」の創製を目的とした。具体的には、エクソソームの構造そのものよりも機能を司る構成成分に着目し、機能の要であるRNAを膜成分とする中空粒子(RNAソーム)を構築し、内水相に生体高分子を内包するとともに表層を機能性ペプチドで修飾し、高機能化が可能なプラットフォームの構築を検討した。本年度は以下の3つの項目:1)RNAソームの構築と多糖分子の内包、2)機能性ペプチドによる中空粒子膜の修飾、3)生理活性メディエーターとしての機能評価を行った。1, 3)に関して、強力な生理活性(RNA干渉)を誘導することで知られるsmall interfering RNA (siRNA)に着目し、siRNAを膜成分とするRNAソームを構築した。その結果、化学構造や鎖長が調節されたブロック共重合体を用いることで粒径約100nmの中空粒子を調製できること、水溶性高分子であるデキストランを内包できること、膜成分を架橋することで生理条件下で安定化できること、および培養細胞にsiRNAとデキストランを導入できることを明らかにした。2, 3)に関して、ポリアスパラギン酸からなるモデル中空粒子を作製し、その膜成分に機能性ペプチドを修飾する手法を確立した。とくにFasリガンド模倣ペプチドについて検討を行い、生理活性評価の基盤を確立するとともに、細胞死を誘導できる可能性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、RNAソームの構築、生体高分子の内包、および機能性ペプチド修飾に成功した。また、調製されたRNAソームは生理条件下で有意な生理活性機能を有することを確認した。以上より、順調に進展しているものと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、多様な核酸分子(1本鎖のアンチセンス核酸、single-guide RNA、メッセンジャーRNAなど)をRNAソームに搭載できるかどうかを検証するとともに、機能性ペプチド修飾との技術融合の可否についても検討する。また、得られた種々のRNAソームについては、生理活性メディエーターとしての機能を随時評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、siRNAを膜成分とするRNAソームを用いて種々の生理活性試験(細胞実験および動物実験)を行う計画であったが、さらに有望なRNAソームが見出されたため、そちらを主軸に据えて生理活性試験を行う計画に変更した。そのため、一部の生理活性試験の開始時期が2018年度から2019年度になり、予算の使用計画にも変更が生じた。
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