研究課題/領域番号 |
18K19907
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
中路 正 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 准教授 (10543217)
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研究分担者 |
松村 和明 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (00432328)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | ハイドロゲル / 傾斜階層構造 / メカノバイオロジー / 間葉系幹細胞 / キメラタンパク質 / メカノ・ケミグラジエントゲル |
研究実績の概要 |
本年度は、①力学的傾斜構造を形成できるゲル前駆高分子「特異的相互作用ペプチド担持ポリマー」の作製、②細胞-材料間の化学的・物理学的影響を評価できるポリマー表面の構築と「化学的組成と物理学的組成が細胞に及ぼす影響の統合的理解」に向けた検討の2点について研究を進めてきた。 ①に関しては、申請時に記載した設計指針を基にゲルを作製した結果、予想よりも極めて軟質なゲルが得られた。これは、ペプチド-高分子間の架橋密度の低さまたは相互作用の弱さが要因と考えられた。そこで、(A) 超遠心法を利用して本当に傾斜構造ゲルが作製可能かを光架橋部位を導入した高分子を用いて調査すること、および (B) 高分子と高い結合定数で相互作用するペプチドのファージディスプレイ法を利用した探索の2つの小テーマを並行して進めることとした。 光架橋部位を導入したポリマーを超遠心し光照射により架橋させることで、硬度が傾斜的に変化するゲルを作製することができた。次年度は、引き続き高分子と相互作用する最適なペプチドの探索を進め、申請時のコンセプト通りの物理架橋型グラジエントゲルの構築を目指す。 ②については、思った以上の成果が挙げられつつある。表面をコーティングする高分子の化学的組成を統一し、物理学的組成、すなわち硬度のみを変更した表面上での細胞挙動を評価した結果、細胞の接着・伸展、および遺伝子発現のすべてにおいて顕著な違いが認められた。これまでにも、力学的影響により細胞挙動が変化するという見解は様々報告されているが、それらとの決定的な違いは「表面の化学的組成を変化させずに物理学的性質のみを変化させている点、すなわち、変化しているパラメーターが一点のみ」という点である。次年度も引き続き検討を進め、化学的・物理学的性質と細胞挙動の関係を精査し、バイオマテリアル開発に不可欠な情報の提供につながる知見を集積させる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績概要にある①グラジエントゲルの構築は、若干予定よりも遅れている感が否めないが、②化学的組成と物理学的組成が及ぼす細胞挙動の評価においては、当初考えていた予定以上に興味深い成果を多数得ており、大きな進展といえる。これらの点を総合的に判断すると、おおむね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
高分子の分子量分布を利用したグラジエントゲルの創製については、最適な相互作用ペプチドの探索を最優先として研究を進め、ゲル前駆高分子の作製を目指す。 一方、化学的組成と物理学的組成が及ぼす細胞挙動の評価については、引き続き検討を進めるとともに、化学的・物理学的に変化させた界面での細胞挙動について網羅的に調査していく。特に、本年度はマクロレベルでの細胞-材料間の相関を追跡してきたが、2019年度は、1細胞の力覚に関する知見の集積も進めていき、ミクロレベルとマクロレベルでの細胞挙動の評価をそれぞれ行い、バイオマテリアルと細胞の関係について精査できる知見を集積していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
高分子の分子量分布を利用したグラジエントゲルの構築に関する進捗が遅れているため、そのテーマで使用予定であった予算分、残額が生じた。未使用分は、2019年度引き続き進める、ゲル創製のために使用する。 また、大きな成果が挙げられれば、本年度末に論文投稿をできればと考え、論文校閲費として計上していたが、論文投稿に至らなかったため、この予算に関しても次年度に使用する予定である。
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