研究実績の概要 |
本研究が解決すべき課題は,脈管系の重要な構成要素である大小のリンパ管を生体外で構築し,蠕動・収縮といった複雑で動的な細胞周囲の微小環境を忠実に再現した組織構造体の構築である.一方で,三次元組織構造体を構築するにあたり,血管・リンパ管のようなファイバーコンポーネントを配置した造形方法がないことに直面した.以下それらの解決も踏まえ研究を遂行した. ① 三次元組織構造体の構築 線維構造体のアセンブリ方法として,従来の細胞任せ(自己配列)の線維構造体形成ではなく,予め形成した複数本のマイクロファイバーを集束し,線維構造体を亢進させる三次元組織構造体の構築を提案した.ここでは,両端に磁性粒子(2.8マイクロメータ)を有するセルマイクロファイバー(断面径0.5mm)を作製した.複数本のセルマイクロファイバーは先端を磁場集中させた治具により,液面から持ち上げることにより,液体架橋力に誘引されファイバー同士を集束することができた.これにより,ファイバーコンポーネントが一方向への配向する三次元組織構造体の構築に成功した. ② 力学(伸展・煽動収縮)刺激印加培養システムの構築 作製したセルマイクロファイバーは,昨年作製した伸展・電気刺激印加培養デバイスを用いて,伸展刺激および電気刺激を印加する.作製したセルマイクロファイバーに10マイクロメータ/秒の一定速度で10パーセント伸展ひずみを与えたとき,培養5日目のセルマイクロファイバーのヤング率は約6.0 kPaであることが明らかになった.一方,電気刺激印加時のセルマイクロファイバーの収縮率を算出した結果,ファイバーの収縮応答は,印加刺激に対して周波数遅れや振幅のバラツキが見られるものの,最大収縮率は9.1パーセント,約9.1 mm収縮(3 Hz, 2 V印加の場合)を確認した.
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