本研究の目的は,組織内に存在する細胞が発生する収縮力を3次元的に評価できる手法を開発することである.これにより,細胞が発生した力自体がどのように周囲組織に影響して他の細胞への刺激となるのか,また,細胞外部から細胞へ加えられた力がどのような経路で細胞内部へと伝わり細胞が応答していくのか,等を解明する手段を確立することを目指している.本研究では,これまでに培養細胞での収縮力評価が可能であることを報告してきた光弾性を利用し,組織内の細胞でもこの手法で発生収縮力を評価する手法を開発しようとしている。 平成30年度中に,当初予定した方法が適切でないことから研究計画を変更しており,光弾性を計測するための顕微鏡を自作する方針とした.また令和元年度は,昨年度の策定し直した顕微鏡仕様を基に,光学素子等の一部部品の組み立てを実施した.今年度は,仕様に基づいて顕微鏡を作製し,3次元共焦点光学系を作製し,また円偏光系の光学系を同時に組み込んだ.3次元共焦点系の作製達成と円偏光系によるリタデーション計測可能であることを独立に確認した後,両者を組み合わせて3次元円偏光計測が可能か,検証した.しかし,光路がほぼ変わらないため,本光学系を用いて3次元円偏光計測の実施は困難であると判断した.そこで,方針を変更し,組織内の細胞の収縮力を2次元的なリタデーション計測により,評価する方法へと変更して,その試行を行った.結果,組織内であっても細胞のリタデーションが評価できそうな予備的データを得ている.今後,こちらの手法での評価を目指す予定である.
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