研究課題/領域番号 |
18K19915
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
長谷川 光一 京都大学, 高等研究院, 特定拠点講師 (50378890)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 膵島細胞 / 分化誘導 / 多能性幹細胞 / 3次元培養 |
研究実績の概要 |
本研究では、ヒトES/iPS細胞からの均一な品質の膵島細胞の大量分化・産生(マスプロダクション)法の開発・技術革新を目的とします。具体的には、我々が開発した簡便で均一なヒトES/iPS細胞を閉鎖系で大量培養可能な新規の3次元スフェア浮遊培養法と、我々が作製した膵前駆細胞特異的な新規の糖鎖マーカー抗体による膵島分化過程の詳細な解析を用いて膵島細胞分化法を検証・最適化します。 昨年度は、我々の3次元スフェア浮遊培養法を用い、我々の抗体によるモニタリングを行いながら膵島細胞の誘導法の開発・最適化を行いました。その結果、ヒトES/iPS細胞の拡大培養から分化誘導、膵島細胞作製まで一貫して3次元浮遊培養系で効率よく行う方法を確立できました。この培養法で作製した膵島スフェアにおいて、殆どのスフェアでインスリン(Cペプチド)やグルカゴンの発現も確認できました。 しかし開発した誘導方法では、スフェアの大きさが不均一であったり、インスリンやグルカゴンの発現もスフェアごとに異なっていたり等、改良すべき点が見つかりました。特に大きなスフェアではインスリン等の成熟マーカーの発現が弱いことがわかりました。そこで、スフェアの大きさを一定に保つために、3次元化のために加えているポリマーの濃度の最適化を開始しました。また膵前駆細胞の分化までは、我々の抗体でモニタリング可能でいたが、それ以降の分化・成熟過程では生きた細胞でモニタリングが難しいので、インスリンプロモーター下に蛍光タンパク質遺伝子を導入した遺伝子組換え細胞株の作製に着手しました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度度は、我々の3次元スフェア浮遊培養法を用い、我々の抗体によるモニタリングを行いながら閉鎖系での大量産生を可能とする膵島細胞の誘導法の開発・最適化を計画していました。計画に従って研究を進め、マーカー遺伝子やタンパク質の発現をヒト膵臓発生と比較しながら条件を検討していくことを繰り返し、効率よくヒトES/iPS細胞の拡大培養から分化誘導、膵島細胞作製まで一貫して行える基本となる3次元浮遊培養方法を確立できました。この培養法で作製した膵島スフェアにおいて、殆どのスフェアで膵島の分泌細胞であるβ細胞を示すインスリン(Cペプチド)やα細胞を示すグルカゴンの発現も確認できました。 昨年度の研究ではまた、計画していた通り、成熟して均一な膵島細胞を誘導するための問題の洗い出しにも成功しました。分化誘導開始から膵前駆細胞までは、効率よく分化誘導可能なのですが、それ以降の段階で成熟度や均一性が担保されないことがわかりました。予測どおり、分化誘導後半の成熟化の検討が重要だとわかりましたので、これを生細胞でモニター可能なインスリンプロモーター下に蛍光タンパク質遺伝子を導入した遺伝子組換え細胞株の作製を開始しました。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究で、成熟して均一な膵島細胞を誘導するためには、膵前駆細胞分化以降の誘導過程を改良する必要がわかりましたので、インスリンプロモーター蛍光タンパク質遺伝子を導入した細胞株を作製します。今年度はまた、いくつかの方法で成熟化に挑戦します。昨年度までの結果から実際の膵島と同じ程度の大きさの小さいスフェアの方が内分泌マーカーの発現が高かったので、小さいスフェアを均一に大量に作製するため、分化誘導開始スフェアのサイズの検討、3次元浮遊化のためのポリマーのスフェアの大きさに応じた最適化などを行います。一方で、大きいスフェアに応じた分化誘導因子の処理濃度や処理時間を最適化し、膵臓オルガノイドとして成熟を検討します。また、小さいスフェアで分化誘導したものを集合させオルガノイドを形成させることによる成熟化も検討します。これらでも成熟化が見込めない場合は、他の細胞種(内皮細胞など)との共培養による成熟化も行う予定です。
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次年度使用額が生じた理由 |
見込んでいた海外共同研究者との打ち合わせのための渡航ができませんでした。また、今年度で必要となる時間雇用の研究補助員を雇用するために一部研究の順番を前後して、計画を変更して研究を行った。
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