研究課題/領域番号 |
18K19922
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小倉 裕介 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (20346191)
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研究分担者 |
山田 憲嗣 大阪大学, 医学系研究科, 特任教授 (70364114)
西村 隆宏 大阪大学, 工学研究科, 助教 (10722829)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | ナノロボット / 生体計測 / 光制御 |
研究実績の概要 |
本研究では、細胞の物理特性を計測可能な光制御DNAナノロボットの技術基盤の構築を目的とする。扱うナノロボットは、対象に物理的刺激を与え、得られた応答に応じて蛍光発光などの行動を起こすことにより、生体の計測や制御を行うことを特徴とする。今年度は、ナノロボットを設計・作製し、その機能を検証した。また、ナノロボットを所望の位置へ運搬する手法を検討した。具体的な成果は以下の通りである。 1.ナノロボットの設計 対象に力学的作用を与えることを狙った光制御DNAナノロボットを設計した。本ナノロボットは光信号により、伸長と収縮の動作を繰り返すことが可能であり、この構造変化が力学的作用をもたらすことを期待している。消光分子であるBlack Hole Quencher(BHQ)を修飾したDNAをナノロボットに組み入れた。BHQの光熱変換による反応誘起に基づき、光による空間制御性を得る仕様とした。 2.ナノロボットの作製 設計したナノロボットを作製し、その動作を検証した。実験ではナノロボットに蛍光分子を修飾し、蛍光強度変化から伸長と収縮の構造変化を検出した。その結果、光照射と停止に応じて、ナノロボットの構造が変化することを確認できた。また、構造変化を繰り返し行うことも可能であった。 3.ナノロボットの輸送手法の検討 測定対象へナノロボットを高密度に配置するため、DNAゲルでナノロボットを捕捉し輸送する方法を検討した。基本機能として、光パターンに応じてゲルーゾル化を制御できることや、ゲルの粘性を変化させることにより捕捉した物質の移動度が変化することなどを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光制御DNAナノロボットの例として、光により伸長と収縮の動作を行うナノロボットを設計し、動作を実証した。また、ナノロボットの輸送手法の構築をめざし、DNAゲルによる物質捕捉や光を用いた粘性変化に基づく物質の移動度変化を確認した。このように、ナノロボットを制御するための基本機能を着実に開発している。また、空間制御や計測対象の準備も進んでおり、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
光制御の一つの利点は、ナノロボットを空間局所的・並列に駆動できることである。これまでのバルク系だけでなく、顕微鏡下で制御システムを構築し、局所・並列駆動の検証を進める。また、硬さ計測への適用可能性を確認するため、脂質膜上でナノロボットを駆動する。光パターンを変えながら様々な力分布を与えて蛍光信号を取得し、膜の硬さとの関係性などを調べることで、本手法の有用性を示す。
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次年度使用額が生じた理由 |
備品として購入したレーザー光源の仕様を詳細に検討した結果、当初予定よりも安価に導入することが可能であったことや、ナノロボットの性能向上のために行う再設計・再作製の回数が予定よりも少なくなったことが主な理由である。 この経費は、ナノロボット駆動のためのパラメータ調整にかかる試料、試薬の購入や、成果発表のための旅費と学会参加費にあてる予定である。
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