本研究では、細胞の物理特性を計測可能な光制御DNAナノロボットの技術基盤の構築を目的としている。今年度は以下の成果が得られた。 ナノロボットを光制御することの一つの利点は、空間局所的・並列に駆動できることにある。顕微鏡をベースにした駆動制御系を構築し、昨年度に作製した、光により伸長と収縮の動作を繰り返すナノロボットの操作を行った。組み込まれたBlack Hole Quencher(BHQ)の光熱変換により、光照射領域のみで局所的に駆動操作できることを実証した。 ナノロボットを測定対象領域へ効率的に輸送できれば、その領域で高密度な配置が可能となり、測定性能が向上する。本研究では、輸送のための担体としてDNAゲルの活用を想定している。DNAゲルによるナノロボットの捕捉と解放を実行するため、昨年度の成果を発展させ、2つの光熱変換分子を利用したDNAゲルーゾルの可逆変換反応系を設計した。実験では、異なる2つの波長を使い分けることで、その機能を確認した。 また、ナノロボットによる測定結果は蛍光信号として得られるが、高い分解能と信号対雑音比が求められる。回折限界よりも小さなスポット群を照明光とする超解像イメージング技術を開発し、生細胞蛍光の動画撮影に成功した。また、再構成処理手法により、信号対雑音比を向上できることを示した。 以上のようにナノロボットを配置、駆動し、出力信号を得るための技術が構築されており、これらを統合することで物理特性測定への適用が期待される。
|