肺気腫や慢性気管支炎などの慢性閉塞性肺疾患は咳や喀痰、息切れなどで慢性呼吸不全を伴う難治疾患である。本疾患の治療方法は、現在のところ、気管支拡張剤や去痰剤の対症療法、酸素吸入による延命措置が行われているが、根本的な治療方法は存在しない。本研究では肺組織の機能性の上皮細胞を再生するために必要な肺前駆細胞を作製する新たな分化方法をマウスをモデルとして開発を進めている。これまでに肺前駆細胞で特異的に発現する転写因子を発現させることで、肺前駆細胞マーカーの遺伝子の発現をmRNAとタンパク質レベルで確認したものの、その発現量が不十分であったことから、さらなる追加因子を検索中である。本研究では肺前駆細胞マーカーの発現を促進する因子や抑制する因子を複数同定し、その効果の検証を行っている。また、作製した前駆細胞をin vitroで増殖させる培養条件の検討とin vitroでの分化実験系を構築し、作製した肺前駆細胞の分化能の検証も進めている。in vivoでの分化能の検証方法については、マウスでエラスターゼ処理により肺組織を破壊したモデルマウスに作製した肺前駆細胞を移植する実験モデルを作製し、その有効性の検証を行っている。
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