研究実績の概要 |
心臓は、血行動態の変化(メカニカルストレス)に応じて、形や機能を変容しながらポンプ機能を維持する大変興味深い臓器である。心臓を構成する心筋細胞は、終末分化細胞であり生後すぐに分裂能を失うため、心臓の形や機能の変化は、心筋細胞のリモデリング(変容)により生じることとなる。心筋細胞の肥大現象(変容)は、伸展培養条件下の心筋細胞でも再現されるために、心筋細胞にメカノセンサー分子があることは明白であるが、その分子実体については未だ不明な点が多い。我々の研究から、心筋細胞の『形や機能を変容しながらポンプ機能を維持する』性質は、心筋メカノセンサーを介したCa2+シグナルに支えられていることが明らかとなってきた(Katanosaka et al., Nature Communications, 2014)。しかしながら、これまでに、心筋メカノセンサーを介したCa2+シグナルを可視化した実験的な証拠は皆無である。本研究では、生理状態および病態発症時に、介在板のTRPV2を介して入力するメカニカルシグナルを可視化し、心機能を支えるメカノトランスダクションのトリガーポイントの分子基盤を明らかにする。また、臨床的治療効果を目指して、メカノセンサーをターゲットした新しく画期的な心不全治療を提案することを目指した。本研究では、新生児心筋細胞が周囲の心筋細胞と、介在板を形成して同調拍動を獲得するまでの過程について、TRPV2の役割とこれを介したCa2+シグナルの可視化を試みた。この結果、心筋細胞の成熟課程におけるTRPV2の役割と、介在板部位に生じるCa2+シグナルの実験的根拠を得た。
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