変形性関節症は、微細な軟骨損傷が一因であり、加齢に伴い増加し、軟骨が変性・消失し関節症を発症する。損傷軟骨を再生・修復する直接的な治療法は確立されておらず、軟骨損傷に始まる病態変化を極早期に同定する技術はない。光イメージング技術は、生体への安全性が高く、造影剤を必要としないため早期の臨床応用が現実的である。本研究では、変形性関節症をはじめとする軟骨変性疾患の新規診断法の確立と病態解明を目指し、ラマン分光分析や第二高調波発生 (SHG)など非線形光学効果を利用し無染色イメージング技術を基盤とする軟骨変性疾患の基礎的解析を行い、臨床応用へと展開することを目的とした。本年度は、当科で変形性膝関節症と診断された患者に対して試行された人工関節置換術において、摘出された検体のラマン分光分析を行い、軟骨基質の分子組成変化を捉えることに成功した。 また手術時の関節鏡に搭載するデバイスの試作機を作成した。関節鏡に搭載するため、全体的なサイズの縮小を図り、同時に体内に挿入する先端を、実際に計測する関節鏡外套の中を通すことが可能なサイズにした。今後これらのデバイスを用いて、軟骨の質的解析が可能となる情報量を得られるか検証し、臨床応用を進める予定である。 これらの技術が完成することにより、これまで捉えることのできなかった、軟骨変性の質的評価が可能になり、また未だ確立されていない軟骨再生医療の発展と軟骨再生の過程を評価に寄与することができる。
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