高分子材料は柔軟性に優れるが、骨伝導性(骨に接して材料を埋入した際に、骨が材料表面と直接結合する性質)を示す高分子材料は存在しない。表面修飾によって任意の高分子材料に骨伝導性を付与できるようになれば、臨床医学等への貢献は極めて大きい。また、骨伝導性を示さない材料への骨伝導性の付与は「骨伝導性機序の解明」につながり、「材料と生体の関わり」を解明する鍵の1つになるとも考えられる。 研究者は脊椎ケージとして臨床応用されているポリエーテルエーテルケトン表面をリン酸基修飾すると、骨伝導性を示さないポリエーテルエーテルケトンに骨伝導性が付与されることを見出した。本研究においては、人工腱などで臨床応用されているポリエチレンテレフタレートへの骨伝導性の付与を検討する。ポリエーテルエーテルケトン同様にポリエチレンテレフタレートも直接リン酸化することは不可能である。 そのため、ポリエチレンテレフタレート表面のエステル結合から水酸基を形成し、さらに水酸基をリン酸化する手法によってリン酸基修飾ポリエチレンテレフタレートが調製できるか否かを検討する。また、リン酸基修飾ポリエチレンテレフタレートが調製できた場合には、リン酸基修飾ポリエチレンテレフタレートおよびリン酸基修飾していないポリエチレンテレフタレート表面で骨芽細胞を培養して、骨伝導性に関する細胞特性を評価する予定である。 昨年度までにリン酸基修飾するよりもポリエチレンテレフタレートを加水分解した際に水酸基、カルボキシ基が露出し、高い骨伝導性を実現することを見出した。今年度は実験動物にて骨伝導性が向上するかを評価した。未処理のポリエチレンテレフタレートと比較してリン酸基、水酸基およびカルボキシ基を付加したポリエチレンテレフタレートは骨伝導性が向上する傾向が見られた。
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