研究課題/領域番号 |
18K19929
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
村田 正治 九州大学, 先端医療イノベーションセンター, 特任教授 (30304744)
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研究分担者 |
梅野 太輔 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (00400812)
赤星 朋比古 九州大学, 医学研究院, 准教授 (20336019)
橋爪 誠 九州大学, 先端医療イノベーションセンター, 名誉教授 (90198664)
河野 喬仁 九州大学, 先端医療イノベーションセンター, 特任助教 (90526831)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 炎症 / 分子イメージング / ナノバイオメディスン |
研究実績の概要 |
炎症反応は生体防御において極めて重要な反応であるが、過剰な炎症性応答は組織障害を惹起する。この炎症において重要な役割を担うのがインフラマソーム(inflammasome)と呼ばれるタンパク複合体である。このインフラマソームは刺激を認識する受容体(Nod-like receptor やAIM2等)、ASC というアダプター分子、そしてカスパーゼ1 から構成されており、炎症応答の促進に直接関わっている。近年は感染症だけでなく生活習慣病を含めた様々な疾患との関係が次々と明らかになっている。その中にはアルツハイマー病や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、あるいは心筋梗塞など早期診断が極めて難しい疾患も含まれている。炎症はこれらの疾患の極初期から起こっており、インフラマソームの形成を特異的に捉えることができれば、これらの疾患を極初期の段階で診断することが可能となる。 本研究ではこのインフラマソームに着目した新しい診断・治療システムを開発する。インフラマソームの刺激認識部位には様々な組合せがあるものの、カスパーゼ1活性ドメインだけはすべてに共通している。そこで我々はこのカスパーゼ1に特異的に反応し、その活性に応じてシグナルを変化させることができる機能化造影剤を設計・作製している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではMethanococcusjannaschiiに由来するHsp16.5が自己組織化によって形成するナノ構造体に着目し、その機能化を目的とする。X線結晶構造解析の結果、このタンパク質のC末端はカプセルの外表面に露出していることが明らかとなっており、この領域に標的に対するアンテナ分子を組み込むことが可能である。そこで本研究ではC末端にPreS1ペプチドを遺伝子レベルで組み込んだ。このペプチドはB型肝炎ウイルス(HBV)が肝細胞へ侵入する際に利用している配列であり、非常に特異的である。これとは別に、肝実質細胞の有機アニオンレセプターを標的化したICG修飾ナノカプセルも同時に作製した。これら二つの肝特異的ナノカプセルはいずれも大腸菌から大量発現し、クロマトグラフィーによって精製した。動的光散乱法(DLC)や透過型電子顕微鏡(TEM)等によって詳細に物性評価した結果、直径12nmの球状粒子であることが確認された。またヒトの初代幹細胞に最も近いとされるHepaRG細胞を用い、フローサイトメトリにて肝特異的ナノカプセルの親和性を定量的に評価したところ、期待どおり肝細胞に対する特異性が確認できた。カプセル表面に提示したPreS1ペプチドは立体障害等の影響により十分に機能できない可能性があったが、ナノカプセルとPreS1ペプチドの間に、Gly-Gly-Serのようなフレキシブルなリンカーを遺伝子レベルで組み込むことでそれを回避した。今後はNASHモデルマウスに投与したナノカプセルの動態をin vivoイメージャーを浸かって追跡し、組織化学的データとの対比によって肝特異的ナノカプセルの集積性を多面的に評価する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では分子生物学的手法を駆使することによってタンパク質ベースのバイオナノカプセルを作製・機能化し、in vivoでのインフラマソーム可視化を実現する。まず初年度にナノカプセルの肝実質細胞の標的化を達成する。ナノカプセル分子標的化についてはこれまで肝がん、膵がん、脳神経細胞、あるいは転移性大腸がんなどの標的化に成功しており、外表面へのアンテナ分子呈示技術は独自のノウハウを蓄積している。またカプセル内孔へMRI造影剤や蛍光プローブの固定化技術も確立しており、両者の同時封入によるMRI/蛍光のマルチモーダルイメージングも可能である。次年度はナノカプセルにインフラマソームへの応答機能を構築し、in vitroおよびin vivoでの性能評価を実施する。特にin vivoについては比較的短期間に肝炎を惹起できる超高脂肪コリン欠乏メチオニン減量飼料(CDAHFD)を用いてNASHモデルマウスを作製する。最終的にはこれら全ての機能を備えたインフラマソーム応答型マルチモーダル造影剤を完成させ、NASHの画像診断と治療へと応用する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究ではMethanococcusjannaschiiに由来するHsp16.5が自己組織化によって形成するナノ構造体に着目し、その機能化を目的としている。この生体由来のナノカプセルは申請者らオリジナルの材料であるため、その検出に必要な抗体は市販されていない。そこで現在、ウサギを使ってナノカプセル特異的な抗体の作製を遂行中である。この免疫には半年を有するため、年度を越える形となり、今後発生する精製費用、抗体評価費用を次年度に持ち越した。なお、研究計画自体は順調に進んでおり、当初の目標や計画に変更はない。
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