研究課題/領域番号 |
18K19934
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
坂元 尚哉 首都大学東京, システムデザイン研究科, 准教授 (20361115)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 生物・生体工学 / 細胞バイオメカニクス / 細胞骨格 / 細胞核 |
研究実績の概要 |
まず,顕微鏡ステージ上で観察視野に留めながら細胞に伸展刺激を負荷する装置を作製した.シリコーンゴム製のストレッチチャンバを,両側に設置したステッピングモータを用いて引張ることで,チャンバ内の細胞を観察視野内に留めながら,繰り返し伸展することが可能となった.実際に同一細胞における接着基質伸展前後の細胞核蛍光画像を取得し,細胞核内に生じるひずみ分布を得ることに成功した.また,局所力学特性を評価するため細胞内部に微小ビーズを導入するインジェクションシステムの構築を行った.ピペットプラーを用いて作製した先端外径約1マイクロメートルのガラスキャピラリーを顕微鏡ステージ上で細胞に刺入し,細胞核内部に微小蛍光ビーズを導入した.導入したビーズの熱振動挙動を解析し,細胞内部局所の動的弾性特性をする方法を確立した. 細胞内RNAを蛍光標識することで,繰り返し伸展刺激を負荷した細胞内におけるRNAの局在性および合成量変化の評価を試みた.蛍光標識されたRNAはほぼ細胞核内で観察され,細胞質内での局在は観察されなかった.細胞核内部で観察されたRNAの蛍光輝度分布に核内位置との顕著な相関は見られなかった.繰り返し伸展刺激を負荷した細胞で経時的変化を調べた結果,刺激負荷1時間で,細胞核内のRNA蛍光の減少傾向,24時間の地には回復傾向がそれぞれ見られ,RNA合成そのものに伸展刺激負荷の影響が示唆された.核膜タンパク質の一つであるネスプリン-1を発現抑制した細胞においても,伸展刺激負荷時に同様なRNA合成の変化傾向が観察され,細胞骨格であるアクチンフィラメントを介した力学刺激伝達の影響は確認されなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
顕微鏡ステージ上伸展装置の開発ならびに微小ビーズの細胞内導入方法の確立に予定より時間を要しており,当初予定していたタンパク質合成の局所性評価,ライブイメージングまで至らなかった.
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今後の研究の推進方策 |
細胞の力学環境タンパク質翻訳に与える影響をより確実に評価するため,翻訳に直接関わるリボーソムや翻訳抑制因子の細胞内分布の免疫蛍光観察を実施し,それら分布と局所力学特性や変形挙動,さらに細胞骨格・焦点接着斑分布との関係をまず調べる.その後,ライブイメージングを行い,経時的相関関係から翻訳機構と力学的環境との関係解明をすすめる.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 研究実施に必要な物品購入を行うことができない期間に判明した残額であり,次年度に繰り越すこととした. (使用計画) 次年度研究計画および研究費使用に影響することのない金額であると判断する.
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