本年度は、外表面にストライプ状のマイクロパターン溝をもつコラーゲン多孔質足場材料のin vivo 移植実験を行った。ここで、マイクロパターンの効果を比較するため、パターン溝の有無、溝幅、間隔の異なる足場材料を用いた。まず、本足場材料の内部に間葉系幹細胞を、外表面のマイクロ溝に血管内皮細胞をそれぞれ播種し、生体外で3日間共培養した。次に、ヌードマウスの背中皮下に移植した。8週間移植後、移植物を採取して肉眼で観察したところ、マイクロパターンに沿って新生血管が形成されていること、骨様の組織が再生されていることが確認された。さらに、移植物の切片を組織染色し、これらの組織の形態を観察した。骨再生についてさらに詳しく分析するために、骨分化マーカータンパク質の一種、オステオカルシン(OCN)に対する抗体を用いた免疫染色、骨分化関連遺伝子である骨シアロタンパク質(IBSP)遺伝子、骨形成タンパク質(BMP-2)遺伝子の定量RT-PCR解析を行った。他方、血管新生に関して、血管新生マーカータンパク質VEGFに対する抗体を用いた免疫染色、血管新生関連遺伝子の発現レベル解析を行った。骨再生、血管新生ともに、マイクロパターンをもつ足場材料ではパターンをもたない足場材料(コントロール)に比べて、より豊富な新生骨と新生血管が確認された。さらにパターン溝の幅や間隔によって骨再生の効率が異なることがわかった。よって、これらの知見は、大きな骨組織を効率よく再生するための足場材料の設計に役立つと考えられる。
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