研究課題/領域番号 |
18K19947
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
陳 国平 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (50357505)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | マイクロパターン / 細胞形態 / 細胞骨格 / 遺伝子導入 |
研究実績の概要 |
2018年度は、大きさ(直径)およびアスペクト比が異なるマイクロパターンを作製し、細胞を培養し、細胞骨格の変化および外部遺伝子導入効果を調べた。まず、細胞非接着分子ポリ(ビニルアルコール)(PVA)と光反応性化合物であるアジド安息香酸とエステル化反応させることにより、光反応性のPVA誘導体を合成した。次に、フォトマスクを用いて、この光反応性PVAを細胞培養用ポリスチレン基板の表面にマイクロパターン状にグラフト固定化した。ここで、フォトマスクの設計により、大きさが20、40、60、80μmの円形、面積(5,027平方μm)一定でアスペクト比が1、2、4、8の楕円のマイクロパターン材料を作製した。本マイクロパターン材料でヒト骨髄由来の間葉系幹細胞(MSCs)を培養したところ、MSCsの大きさと形状を単一細胞レベルで制御することができた。また、細胞が大きくなるにつれて、より多くのアクチンファイバーが形成され、ファイバーは放射状かつ同心円状に集合していた。他方、アスペクト比の増大にともなって、アクチンファイバーは楕円の長軸に沿って配向した。また、細胞のメカニカル特性、細胞への蛍光標識マイクロ粒子、および細胞核へのBrdUの取り込みをそれぞれ計測した結果、細胞のヤング率、マイクロ粒子の細胞への取り込み、DNA合成活性は細胞の大きさおよびアスペクト比が増加するにつれて大きくなった。さらに、マイクロパターン化した細胞に、緑色蛍光タンパク質GFP遺伝子をコードしたプラスミドDNAをリポフェクションした。蛍光顕微鏡による観察の結果、MSCsの大きさやアスペクト比が大きいほど、遺伝子導入効率は高くなった。このような遺伝子導入効率の増大は、アクチンファイバーの組織化によるカチオン性複合体の取り込み能の増大およびDNA合成活性の上昇によるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は、マイクロパターン化の方法を確立し、大きさが異なる円形およびアスペクト比が異なる楕円形のマイクロパターン材料を作製できた。開発したマイクロパターン材料でヒト骨髄由来の間葉系幹細胞を培養し、単一の細胞の大きさおよびアスペクト比を制御することができた。培養した単一細胞の細胞骨格の変化やDNA合成活性、外来遺伝子の取り込みおよび発現を評価した。以上のように、当初の計画通りに研究成果を挙げることができたと評価する。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、大きさ、アスペクト比に加えて、形状、キラリティーが異なるマイクロパターン化材料を作製し、細胞骨格の変化および外来遺伝子の導入効果を調べる。2018年度で確立した方法で、面積が一定で形状が異なるマイクロパターン、直径が異なる円状のマイクロパターン、面積が一定でアスペクト比が異なるマイクロパターン、および面積が一定でキラリティーが異なるマイクロパターンをそれぞれ作製する。作製したマイクロパターン化材料の構造を原子力顕微鏡(AFM)で調べる。これらの材料のポリスチレン領域にフィブロネクチンをコーティングし、マイクロパターンの細胞接着性を高め、ひとつの領域内に単一のMSCsを培養できるようにする。培養した細胞の細胞骨格アクチンフィラメントを蛍光標識ファロイジンで染色し、細胞核を4′,6-diamidino-2-phenylindoleで染色する。このようにして作製したサンプルを共焦点レーザー顕微鏡で観察し、マイクロパターンの違いによるアクチンファイバーの組織化への影響を調べる。また、AFMを用いたナノインデンテーションにより、細胞のヤング率を計測する。さらに、BrdUの取り込み実験により、MSCsのDNA合成活性を調べる。マイクロパターン材料で培養した細胞にGFPプラスミドDNAをトランスフェクションし、その導入効率を調べる。遺伝子導入効率と細胞骨格の組織化およびDNA合成活性を考察し、遺伝子導入効率と細胞の大きさ、アスペクト比、形状およびキラリティーとの関係を総合的に評価し、遺伝子導入のための最適条件を探索する。
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