研究課題/領域番号 |
18K19960
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
三田 貴臣 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (00792475)
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研究分担者 |
飯田 真介 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (50295614)
鈴木 智貴 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (80834001)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 造血器腫瘍 / エンハンサー解析 / 遺伝子発現解析 / ゲノム解析 |
研究実績の概要 |
三年度においては、二年度に引き続いて、成人T細胞性白血病(ATL)、形質細胞白血病(PCL)と多発性骨髄腫(MM)、びまん性大細胞性リンパ腫(DLBCL)と二次性白血病を対象として、エンハンサー解析、遺伝子発現解析とゲノム解析を行った。 まず、ATLに関して、前年度までに同定した遺伝子異常に注目して機能解析を行った。特にTP73遺伝子に着目し、スーパーエンハンサーが存在する部位に一致してDNA切断点が認められ、これらがエキソン2と3の欠失を招いてTP73遺伝子の機能変化をもたらし、結果的にATL細胞の増殖促進に働く可能性があることを報告した。また、新たに同定した新規non-coding RNAに関して、CRISPR/Cas9やRNA-seqを用いてその機能解析を行った。 次に、PCLに関して、MMから二次性PCLに進展したケースに注目し、同一患者由来の複数のステージや異なる病変(骨髄、末梢血、胸水)からのサンプルを用いて、全ゲノム解析と遺伝子発現解析を行った。データ解析により、全ての段階で共通して認められる遺伝子異常、並びに、それぞれのサンプルで特徴的に認められる異常を選定した。例えば、KRAS遺伝子の変異がMMの段階から全てのサンプルで認められた一方で、PCLの段階で骨髄や末梢血サンプルのみで認められる異常が存在しており、それぞれが別のクローンとして進化している可能性が示唆された。 また、DLBCLへの化学療法を契機に慢性単球性白血病と急性骨髄性白血病を発症した例について全ゲノム解析を行い、MLL遺伝子を含む新たな染色体転座を同定し、急性骨髄性白血病への進展時にKRAS遺伝子の変異を新たに獲得して、これらが白血病クローンの形質転換に寄与した可能性を報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
三年度においても、前期頃まではCOVID-19に関連した移動制限・活動制限が引き続き継続したため、当大学(名古屋市立大学)における直接の研究活動が限定された。そのため、この間は、主にデータを用いたバイオインフォマティクス解析、並びに別施設(シンガポール国立大学)での共同研究を通しての機能解析に努めた。三年度途中からは活動制限が解除されたため、本格的に研究活動を再開しているが、当初の申請計画からは遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
二年度、三年度に行う予定であった研究計画を遂行する。まず、ATLに関連したプロジェクトに関して、これまでに同定した遺伝子異常と新たな転写産物について、細胞株や動物モデルを用いた機能解析を継続する。また、患者検体を用いた解析により、予後相関との関連性を検討する。PCLとDLBCLに関連したプロジェクトに関しては、次年度中にゲノム解析を終え、学会発表並びに論文投稿を行う。COVID-19に関連した移動・活動制限が解除されたため、今年度中に、当大学を拠点とした研究形態へと移行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
三年度において繰越が生じている。これは、初年度から三年度の前期あたりまでCOVID-19の影響による移動制限・渡航制限が生じたため、当大学(名古屋市立大学)における直接の研究活動が限定されたことに起因する。そのため、1年間の延長申請を行い、承認された。研究計画の一部をシフトさせ、研究計画を遂行する。
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