前年度までに開発した、直交する2軸のライトシートによる等方的な偏光照明光学系の確立に加え、今年度は観察光学系を光学基盤の直線上に構築することにより、これまでの蛍光偏光計測において課題となっていた、45度折り曲げミラーおよびダイクロイックミラーによる45度の偏光透過軸と135度の偏光透過軸間の消光比の劣化を解消し、0度と90度の偏光透過軸と同様に高い消光比を持つ蛍光偏光観察光学系を完成させた。一方で、新たに構築した観察光学系は光学基盤上に水平の光路をもつため、水平向きとなるディッピング水浸対物レンズに対しては、水漏れしないように工夫された観察試料保持用チェンバーの開発が必要となった。今年度はこの点をクリアした観察試料保持用チェンバーおよび、3次元断層撮影時にチェンバー内で観察試料のみを(チェンバー全体は動かさずに)光軸方向に動かすピエゾステージ操作法の開発により、単一細胞内の突起構造などの細胞内微細構造から、小型魚類胚全体まで、サブミクロンからミリの幅広い空間的広がりのレンジにおける生体分子配向観察を可能とする実用化システムが完成した。今年度は高NAディッピング水浸対物レンズを用いた線虫の個体イメージングおよびその体内における胚発生の観察、またショウジョウバエ胚内の臓器形成を観察対象として、多細胞個体の断層イメージングにおける分子配向観察をすすめた。また、乾燥系低倍レンズを用いた透明化組織観察では、3ミリ立方程度の広がりをもつメダカ成魚脳のほぼ全体像を3次元的に画像取得できた。このような3次元分子配向観察は多細胞生物の個体発生や臓器オルガノイド形成など、3次元組織の形態形成メカニズムを明らかにする上で活用されることが期待される。
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