研究課題/領域番号 |
18K19963
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
浅野 桂 広島大学, 統合生命科学研究科(先), 特任教授 (80838962)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 癌遺伝子 / 翻訳制御 / アデノ随伴ウィルス / non-AUG開始コドン / 翻訳メカニズム / ゲノム翻訳マップ / 翻訳制御タンパク質5MP |
研究実績の概要 |
本研究を実施するにあたり、広島大学統合生命科学研究科において研究室を設置し、予定通り主要装備品(50万円以上)を購入し研究を開始することができた。 本研究の課題すべてで用いられ、本研究にユニークなデータサイエンス手法であるribosome profiling(ribo-seq)法の導入に着手した。アデノ随伴ウィルス(AAV)ベクターを導入したヒト細胞のribosome profilingを理研・岩崎真太郎研究室、NIH、NIAID・John A Chiorini研究室、東京大学新領域研究科・鈴木穣研究室の研究協力を得て行った。さらに、5MP1による制御の対象となる上流読み取り枠(upstream open reading frame, uORF)や新しいタイプの開始コドン、nonAUG開始コドンのゲノムレベルでの制御を研究する手法を、ゲノムサイズの小さい分裂酵母を対象に加藤太陽助教(島根大医)の研究協力を得て開発した(K. Asano Curr Genet 2021にその成果を総説)。神経疾患の原因となるrepeat依存性non-AUG翻訳が5MPの新たな標的となることをミシガン大・Peter Todd研究室の研究協力を得て見出した。Ribosome profilingの専門家であるコーネル大・Shu-bing Qian研究室、ならびにUniversity College Cork(アイルランド)・Paval Baranov研究室よりErica Xu、Martina Yordonova博士をそれぞれ年2ヶ月のクロスアポイントにより特任助教に迎え(令和4年度までの契約)、同手法の導入に着手した。 FLAG-affinity chromatographyによってヒト、ハエ細胞からそれぞれの5MPタンパクと相互作用するタンパク質を精製し、質量分析により網羅的に5MPが形成するタンパク質ネットワークを探索した。その結果、5MPが両種において共通して翻訳開始因子eIF3を通じてリボソーム開始複合体に結合することが明らかになった。質量分析には熊本大学発生研・中村輝教授の研究協力を得た。今後、AAVタンパク質による5MP複合体制御を探究するためにこの手法を応用する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
広島大学を拠点に、日本ならびにアメリカ、アイルランドの8研究室との広範な研究協力ネットワークによって、5MPの翻訳制御をゲノムワイドに探求する様々な実験系が構築された。データサイエンス、ならびに分子動態解析による翻訳マシーンの解析など、コンピューターを用いた手法も導入に向けて動き出した。広島大学の研究者との研究協力体制も整ったので、次年度で成果を報告したい。 令和2年度は世界がコロナ禍に苦しめられた時期と重なってしまい、研究代表者自身、広島に入れたのは令和2年の8月末であった。そのこと等からくる研究の遅れにより、研究資金を次年度使用するに至った。
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今後の研究の推進方策 |
生物学的な実験を進めながら、本研究にユニークなデータサイエンス手法であるribosome profiling(ribo-seq)法の導入を進める。具体的にはRibo-seq DNA libraryの作成方法、ならびにこれによって得られた配列情報のコンピュータ解析方法を確立する。そのためのreagentならびに解析に必要なコンピュータの購入を進める。
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