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2023 年度 実施状況報告書

新規癌遺伝子5MP1によるnon-AUG翻訳制御の生物学的役割に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K19963
研究機関広島大学

研究代表者

浅野 桂  広島大学, 統合生命科学研究科(先), 特任教授 (80838962)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
キーワード翻訳制御 / non-AUG開始コドン / ゲノム翻訳マップ / 翻訳制御タンパク質5M P / ネオアンチゲン / 癌免疫
研究実績の概要

課題1の5MPによる翻訳制御のゲノムワイドな効果を明らかにするため、ヒトのゲノムワイドなnonAUG開始コドンのリスト化を行なった。高頻度開始コンセンサスであるGCCGCC配列を-4から-9位に持つnonAUG開始位置と、この6塩基のうち1塩基置換を許容したものをおおよそ400リストした。Trips-vizサイト(https://trips.ucc.ie/homo_sapiens/Gencode_v25/)ではこれまでに生成したほぼ全てのribo-seqデータを蓄積しており、これによってリストされた開始コドンからの翻訳開始頻度を検証した。現在もこの検証作業は進行中だが、これまでに検証したリストのうちほぼ3分の1で同定された開始位置からの翻訳を確認することができた。残りは上流のAUG開始コドンからの読み枠によってその位置からの翻訳が阻害されている場合がほとんどであった。同定されたnonAUG開始コドンはシャペロンや癌源性転写因子など、がん細胞の増殖を促進する遺伝子の上流にあって、それらの遺伝子の発現を普段は抑制している。5MP1をはじめとする翻訳制御性がん遺伝子の発現によってnonAUG翻訳開始が抑制されると、これらの遺伝子の発現が脱抑制され癌が進行するというモデルが強く示唆された。

これらの知見から、課題2のネオアンチゲンの生成機構についても、nonAUG開始コドンの下流にあって普段は抑制されているAUG開始上流読み取り枠に注目すれば良いことが明らかになった。このような読み取り枠にコードされるタンパク質は正常細胞には存在しないが、5MP1が発現すると脱抑制されて生成されるため、非自己の異常タンパク質として癌免疫の対象になる。次はこれらのタンパク質がMHC1によって抗原として提示されやすいかを分子動態解析によって明らかにしたい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

コロナ禍で遅れていたribosome profiling法の導入を昨年度ようやく実現し、今年度は新たに研究員を雇用して集中的に研究を推進した。

今後の研究の推進方策

研究を進める中、一般にゲノム転写物はAUGにより始まるコード領域がマップされているだけで、その上流にあるnonAUG開始コドンはそのほぼ全てが未同定であるという事実に直面した。この問題点を克服するため、まずヒトゲノムで「実際に」翻訳されている全てのnonAUG開始コドンをリストすることから始めなくてはならなくなった。現状では今回報告した手法が唯一の効率的な方法なので、残った研究資金と時間の全てを注入してこのリソースを完成し、5MP1による癌翻訳制御の全体像を提示したい。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍によって初年度に実行するはずであったribosome profiling法の導入が三年遅れ、昨年度これがようやく実現した。次年度使用額を用いて新たに博士研究員をフルタイム雇用して集中的に課題研究を推進したい。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2023 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [国際共同研究] ミシガン大学/カンザス州立大学/コーネル大学(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      ミシガン大学/カンザス州立大学/コーネル大学
  • [国際共同研究] University College Cork(アイルランド)

    • 国名
      アイルランド
    • 外国機関名
      University College Cork
  • [学会発表] eIF3 mediates translational heat shock response through the RNA binding g subunit.2023

    • 著者名/発表者名
      A. Oguro, B. Rider, J. Wan, K. Ochsner, H. Casey, G. Sakai, Y. Mao, S. Gillaspie, E. Aube, L. Tang, H. Yamada, N. Bardiya, J. Morris, M. Thornton, A. Takasu, W. Pepper, A. Cecil, M. Asano, E. Obayashi, C. Singh, H. Kato, S.-B. Qian, K. Asano.
    • 学会等名
      11th International Fission Yeast Meeting
    • 国際学会

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公開日: 2024-12-25  

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