研究課題/領域番号 |
18KK0002
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
伊東 信宏 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 教授 (20221773)
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研究分担者 |
齋藤 桂 京都市立芸術大学, 日本伝統音楽研究センター, 講師 (20582852)
俵木 悟 成城大学, 文芸学部, 教授 (30356274)
上畑 史 国立民族学博物館, グローバル現象研究部, 機関研究員 (60827864)
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研究期間 (年度) |
2019-02-07 – 2024-03-31
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キーワード | 東欧演歌 / クルターグ / ポップフォーク / コリンダ |
研究実績の概要 |
本研究は、A)東欧の「コレダ」系の行事と日本の来訪神行事の調査・比較検討を行い、B)音楽における「ポップフォーク」(民俗的要素をもつポップ・ミュージックのジャンル)および民俗音楽の編曲作品、という2つのレヴェルで東欧と日本の比較を行おうとしてきた。 2022年度は、コロナ禍、および戦争の影響などにより、依然として国内および海外での調査・研究が困難であり、その都度どこまでの調査が可能か探りながら研究を進めた。 まず当初予定にあった日本の村落、島嶼における調査はまだ各種の配慮が必要であることから、2023年度に延期とした。一方2022年12月にはようやく海外での調査が可能となり、A)の東欧の「コレダ」系行事の一つであるルーマニアのコリンダに取材した作品を書いたジェルジ・クルターグに関するインタビュー調査を行った。これはクルターグ研究のトップランナーであるレイチェル・ベックレス・ウィルソン教授(ロッテルダム大学)との面談、およびクルターグと親交の深い演奏家(波木井賢・菊池裕美夫妻、アムステルダム在住)に対するインタビューである。この研究の成果は、2023年夏に論文の形でまとめる予定である。 またB)に関しては、二つの大きな成果があった。まずこれまで取り組んできた東欧のポップフォークに関する論集『東欧演歌の地政学』(9つの章、序論、対論、2つのコラムから成り、海外の著者3名を含む12名の共著者による)が完成した。これはアルテス出版から2023年5月に出版された。この完成を期に、2023年2月にはポピュラー音楽研究の世界的リーダーの一人、キース・ニーガス教授(ロンドン大学ゴールドスミス校)、および本研究課題の海外研究協力者であるイヴァ・ネニッチ博士(セルビア、ベオグラード芸術大学准教授)を招き、国際音楽学コロキアム「ポップとフォークの間」を開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要にも記したとおり、国内での調査についてはコロナ禍の影響が残り、まだ調査を再開できていない。この点では進捗状況に遅れがあることを認めざるを得ない。 だがB)音楽における「ポップフォーク」および民俗音楽の編曲作品、という2つのレヴェルで東欧と日本の比較のうち、特に「ポップフォーク」研究に関して、予定通り東欧のポップフォークに関する編著が完成し、出版された。これは東欧の大衆音楽に関する初めての日本語の書物である。さらにこの本の内容を中心として、国際音楽学コロキアムを開催した。ここには英国からキース・ニーガス教授(ロンドン大学ゴールドスミス校)、および本研究課題の海外共同研究者であり、本の共著者でもあるイヴァ・ネニッチ博士(セルビア、ベオグラード芸術大学)が対面参加、また濱崎友絵博士(信州大学)、岩谷彩子博士(京都大学)、輪島祐介博士(大阪大学)など国内の共著者も対面で参加し、さらにオンラインにより、海外共同研究者クララ・フルヴァティン博士(リュブリアナ大学)なども加わって、濃密な議論を行った。これらからするとB)については当初の計画以上の進展があった。 両者を総合し「順調に進展している」と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
B)に関してはほぼ実質的な研究を終えている。A)国内での民俗学的調査については、これまで延期してきたが、2023年秋に規模を縮小して実施する予定である。 延長した2023年度には上記の調査の後、A)B)両者の検討を行う研究会を開催し、本研究課題の総まとめとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまで3年間にわたって、コロナ禍の故に予定していた国内での民俗行事の調査ができなかった。2023年度にはようやく可能になると考えられ、予定を1年延期して2023年度に調査を行う予定である。そのための経費を翌年度に繰越し、国内での調査を行った上で、全体の取りまとめとなる研究会を年度末に開催する予定である。
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