研究課題
2020年度の主な実績は、(1)昨年度に引き続き、過去に記録されたグイ音楽のアーカイブ編纂の続行とその一部の精密な観察の整備を進めたことと、(2)言語音の韻律的リズムと楽器演奏を伴う歌の音楽的なリズムの比較分析アプローチに着手したこと、(3)治療ダンスの音楽のリズムの初の分析を行ったこと、(4)グイ社会で比較的広く用いられる外来の楽器ラメラフォンの歌の旋律とリズムの分析、(5)ラメラフォンの構造の変化の考察、に要約できる。(1)に関しては、1970年代~1990年代に収録した録音の電子化済み資料を対象に、特に民話の中に現れる歌特有の単語(無意味語や間投詞)、特殊な規則が適用された表層形を持つ単語の特定を行った。また、昨年に引き続き、メタデータを録音記録に連結する目録の編纂を進めた。(2)については、研究代表者(中川)と研究分担者(松平)とが、それぞれ言語リズムと音楽リズムを分担して、これまでの考察結果を持ち寄り、現在編集作業が進行中のアンソロジー『地球の音楽』(東京外国語大学出版会)に「カラハリ狩猟採集民グイ人の歌」の執筆をした。(3)については、松平がその成果の一部を日本アフリカ学会第58回学術大会で報告の予定で、(4)については松平が日本ポピュラー音楽学会第32回年次大会で報告し、(5)については松平が日本アフリカ学会第57回学術大会で成果の発表を行った。新しいプロジェクトの展開も本格化してきており、(1)に関しては、田中二郎(2020)『ブッシュマンの民話』(京都大学学術出版会)英訳刊行プロジェクトにおいて、中川が、歌を含む原文のテキストの表記の監修を進めており、すでに、収録予定の26物語のうち、8話の作業を終えている。これは、本研究課題と同刊行プロジェクトに相互的利点を生み出す。
4: 遅れている
コロナ禍により海外出張ができず、予定していた現地調査、国際集会など実施が制限されている。現地調査については、ホスト機関のボツワナ大学の共同研究者による実施も不可能であった。新しい資料の追加収集の点で遅れている。
次の活動を進めて行く予定だが、(3)については、世界規模的なコロナウイルス疫病禍の今後の収束の実態を注視しながら柔軟に対処しなければならない。(1)過去のグイ音楽記録のアーカイブ編纂。(2)海外研究者チームとの研究集会・セミナー開催(オンライン開催について相談)。(3)海外チームメンバーとの共同現地調査の実施(ボツワナ大学からの現地情報を十分に考慮して現実的な対応を現地ホストと相談しながら時期を決定。調査地のあるボツワナ国内での感染状況が早めにコントロールされれば、ボツワナ大学チームの単独調査を先に実施する可能性あり)。
COVID-19の世界規模的な蔓延により、予定していた現地調査および研究集会を開催することができず、それに伴う旅費および謝金などの人件費を使用しなかったため次年度使用額が生じた。現地調査について、現地ホスト(ボツワナ大学)や現地調査協力者との連絡を密にとり、調査地の状況を慎重に考慮しながら、現地調査の時期を決定する。日本よりもボツワナの感染状況が早めにコントロールされれば、ボツワナ大学の共同研究者チームの単独調査を先に実施することを検討している。
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語学研究所論集
巻: 25 ページ: 335-341
巻: 25 ページ: 343-352
巻: 25 ページ: 353-360
巻: 25 ページ: 361-369
巻: 25 ページ: 371-388
巻: 25 ページ: 389-398
巻: 25 ページ: 399-407
巻: 25 ページ: 409-417
Papers from the first meeting of ILCAA Joint Research Project “Studies in Asian and African Geolinguistics”.
巻: NA ページ: 未定
Nutrients
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10.3390/nu13041105
今川恭子(編著),わたしたちに音楽がある理由: 音楽性の学際的探究. 東京: 音楽之友社
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