研究課題/領域番号 |
18KK0006
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
中川 裕 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (70227750)
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研究分担者 |
高田 明 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (70378826)
松平 勇二 兵庫県立大学, 国際交流機構, 特任助教 (90649386)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2024-03-31
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キーワード | コイサン / 民族音楽 / 韻文 / クリック子音 |
研究実績の概要 |
2022年度の実績は以下の通りである:(1)過去に記録されたブッシュマン音楽のアーカイブ編纂を継続し、そこから派生される新トピックを探求した;(2)グイ語・ガナ語のフォークロアのテキスト分析を精緻化し、歌とその文脈との関係の解明を試みた;(3)インターネットによる遠隔調査を試験的に導入し、グイの音楽の現状にかかわる聞き取り調査を行った;(4)研究成果のアウトリーチ活動をおこなった。 (1)に関しては、研究代表者が、歌を含む原文のテキスト表記の監修を担当したTanaka (2023)が刊行された。(2)の成果には、物語本文では一度も明示的に語られない重要な登場人物の名前や人間関係を歌詞から読み取ることや、歌的セリフに現れる、音韻的に変則的な文言を、トリックスターのスピーチスタイルから解釈するという、歌を通して可能となる新しい解釈が含まれる。(3)の試みにより得られた歌の伝統の危機についての知見から、子供を主な対象とするグイ・ガナの歌の復興という応用的な問題意識をもつに至った。これに関連して研究代表者は、日本国内に滞在中のグイ語話者とガナ語話者の協力を得て、グイ・ガナのフォークロアの分析と文書化の精緻化と、物語および歌を音韻的妥当性を満たす実用的正書法によって表記し、さらに、歌を含む物語の正書法素材の開発を開始した。これによって、グイ・ガナの歌の復興という派生的な研究活動を具体的に始動した。これらに加えて、研究代表者は、歌や韻文、フォークロアに用いられることのある表意音(擬音語・擬態語)の調査も進めた。その成果は、2023年刊行予定のKortvelyessy編 Onomatopoeia Handbookの中の章になる予定。(4)の活動としては、東京外国語大学公開講座で研究分担者の松平がふたつの市民向け講座で研究成果の紹介をした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
パンデミックにより現地調査ができなかったため、追加資料の収集およびこれまでの資料の解釈の確認ができず、アーカイブ規模拡大が計画よりも遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
集中的な現地調査を再開し、遅れ気味の資料拡大を試みる。また、国内に滞在中のグイ・ガナ母語話者の協力を得て、これまで蓄積してきた資料の整備を充実させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症の蔓延が日本でも関係諸国でも深刻で、予定していた現地調査および研究集会を開催することができず、それに伴う旅費および謝金などの人件費を使用しなかったため次年度使用額が生じた。 日本でコロナウイルス感染症の5類への位置付け変更があり、また、関係諸国でもコロナ政策と認識が変わってきたことを踏まえて、現地調査のための海外出張の再開を計画すると同時に、2022年度に部分的に導入した国内滞在中の母語話者の協力を得て、補足的資料の収集と、蓄積してきた資料の精緻化の作業を進める予定である。
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