研究課題/領域番号 |
18KK0008
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
増本 浩子 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (10199713)
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研究分担者 |
Grecko Valerij 神戸大学, 国際文化学部, 非常勤講師 (50437456)
八木 君人 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (50453999)
楯岡 求美 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (60324894)
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研究期間 (年度) |
2019-02-07 – 2022-03-31
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キーワード | トビリシ・アヴァンギャルド / 多言語多文化主義 / コスモポリタニズム / 亡命文学 / アーカイブ調査 |
研究実績の概要 |
2019年3月から約2か月間、ジョージア側の中心的研究協力者であるA.カルトゥージア教授(トビリシ国立大学)が学振外国人招聘研究者として東京大学に滞在したため、東京で研究会を開催し、トビリシでの資料調査に関する意見交換を行った。現地での調査を効率的に進めるため、教授を通じてトビリシの研究者に資料予備調査を依頼した。 9月に日本側研究者全員が約2週間トビリシに滞在し、ジョージア国立国会図書館、レオニゼ文学博物館等で資料調査を行った。その結果、1918年から1920年の間にアヴァンギャルド芸術家グループが出したマニフェストや、創刊号のみ刊行しただけで廃刊になった同人誌など、希少な資料が相当数残されていることがわかった。これらの資料のさらなる調査・研究、資料集の刊行などが今後の課題になると考えられる。 現地滞在中、トビリシ国立大学の研究者と共同で国際研究集会「The Dynamics of Cultural Processes between Center and Periphery」を開催した。集会にはアヴァンギャルド研究の第一人者であるC.イーチン教授(ベオグラード大学、セルビア)を招いて意見交換を行った。また、イーチン教授の仲介で、トビリシ・アヴァンギャルドの代表的画家K.ズダニエヴィチの孫で、自身も画家であるK.クタテラゼに会って話を聞くことができた。その際、彼の手元にも当時の資料が残されていることがわかったのは、大きな収穫だった。 2020年2月には増本がドイツのボッフム大学とベルリン自由大学を訪問し、ソ連併合後にドイツに亡命しドイツ語で執筆した作家G.ロバキゼについての資料を収集し、K.アイマーマッハー教授らと意見交換を行った。3月にはE.ゴルフンケリ教授(ロシア舞台芸術大学)を招聘し、ジョージア文化がロシア演劇に与えた影響についての研究打ち合わせを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ジョージア側の万全のサポートもあり、図書館・博物館等での歴史的資料調査は順調に進んでいる。また、当時活躍した芸術家の親族に会って話をすることができ、その親族の手元にも資料が残っていることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、日本側研究者全員が毎年2週間程度トビリシに滞在して、現代歴史博物館、文学芸術アーカイブ、レオニゼ文学博物館、国立国会図書館等を訪問し、歴史的資料を体系的に調査する。調査にあたっては、A.カルトゥージア教授(トビリシ国立大学)、C.イーチン教授(ベオグラード大学)をはじめとするアヴァンギャルド研究者のアドヴァイスを得る。当時トビリシで活動していた芸術家の親族等、関係者とできるだけコンタクトをとり、情報の提供を求める。 調査した資料をもとに、各国出身の芸術家たちがナショナリティを超えてどのようなグループを形成し、どのような成果を残したかを確認する。効果的に研究を遂行するために、特に重要となる3つの文化圏、すなわちロシア(担当:楯岡、グレチュコ、八木)、ドイツ(担当:増本、グレチュコ)、ジョージア(担当:楯岡、グレチュコ、八木)の文化的背景をもつ芸術家に焦点を絞る。作業の進捗状況の確認と意見交換のために、年に2回程度、神戸または東京で研究会を開催する。 資料を調査しながら、トビリシ・アヴァンギャルドの特殊性について考察する。その際、トビリシがアヴァンギャルド運動の中心地となったヨーロッパの大都市から遠く離れた周縁的な位置にあると同時に、ヨーロッパとアジアの接点でもあるという地理的・文化的な条件がどのような意味を持っていたかということも併せて考察する。このような作業を通じて、トビリシ・アヴァンギャルドが国際的アヴァンギャルド運動の中で占める位置と影響関係を明らかにする。 研究の成果は国内外の研究集会、学会等で発表する。歴史的に貴重な資料を集めた資料集の刊行についても計画を立てる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月にトビリシ国立大学の研究者を日本に招聘する予定だったが、コロナウイルス感染症拡大に伴い、来日がキャンセルになったため、その旅費が次年度に繰り越しとなった。この残額は、2020年度に改めてトビリシの研究者の招聘旅費として使用する予定であるが、2020年度の旅費の使用については、今後のコロナウイルス感染症に関連する渡航制限などの動向を注視する必要がある。
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