研究課題/領域番号 |
18KK0017
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大澤 孝 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 教授 (20263345)
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研究分担者 |
山口 欧志 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 研究員 (50508364)
大谷 育恵 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (80747139)
齊藤 茂雄 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 日本学術振興会特別研究員 (70634690) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2023-03-31
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キーワード | モンゴル国東部 / スフバートル県 / テブシンシレー郡 / 仏寺遺跡 / 国際共同研究 / 突厥時代 / ヘンテイ県 / アグイト遺跡 |
研究実績の概要 |
本年度も昨年度に引き続き、本科研の調査対象地であるモンゴル国およびその周辺地帯などが新型コロナウイルスの感染拡大が収束する見込みがなく、入国制限があったため、今年度に計画していたモンゴル国東部のスフバートル県テブシンシレー郡に所在のある突厥・ウイグル時代の石囲い遺跡の発掘調査は実施することができない状況が続いた。そのため、調査対象国のモンゴル国科学科でミー考古学研究所と協議の上、調査は次年度へ延長することで合意した。 そのため、今年度は令和2年度に、モンゴル国東部のスフバートル県テブシンシレー郡のイフ・オンドォル・ボラギィーン・ドブジョという石壇遺跡の発掘調査から得られた考古学的遺構のデータや建築に利用された瓦や煉瓦の拓本による図面作成と、遺跡から出土した動物骨などの年代測定のための遺物データの整理を行うとともに、それらの分析結果を報告書にまとめた。本調査の結果、本遺跡は16~17世紀の仏教遺跡(仏寺)であることが明らかになったが、この発掘はモンゴル中世の文献からは裏付けられない東部モンゴルでの仏教教団の存在とそこを勢力範囲に収めた政治勢力の存在を浮き彫りにするものとして、意義があり、今後の当該地域における歴史状況を考える上で、大きな第一歩となったことを明記したい。 また、本科研のテーマと密接に関係する遺跡のひとつで、モンゴル国東部のヘンテイ県アグイトの突厥時代の14の石囲い遺構を2015年にモンゴル考古学研究所と共同発掘調査したことがある。この遺跡は14基の石囲い遺跡が弓状に配列された独特の形状を持つ。本遺跡について、出土した獣骨の放射性年代測定方法による分析結果に基づき、モンゴル国科学アカデミー考古学研究所の研究員と共同で、モンゴル語の調査報告を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ここ3年の間にモンゴル国を始めとするユーラシア草原地帯にも新型コロナウイルスが蔓延していて、本科研で当初予定されていた東部モンゴル地域での関係する時代の遺跡の表面調査や、関係する時代の遺跡の共同発掘調査が困難であった。そのために、モンゴル科学アカデミー考古学研究所との国際共同としての実地調査面での遅れは否めないものがある。 ただし、こうした状況下でも、本科研と密接に関連する東部モンゴルでの遺跡の分布状況や既に共同発掘によって得られたデータ分析をおこないながら、次年度への準備を行ってきたという面では、少なからず成果は出ているという点も強調しておかなければならない。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、ようやくコロナ禍が終息してきている中で、今年の9月中旬の2週間ほどを、モンゴル国科学アカデミー考古学研究所とモンゴル国東部のヘンテイ県の突厥時代の石囲い遺跡に関する表面調査を実施する。そして、昨年、モンゴル考古学研究所がヘンテイ県で試掘した突厥時代の石囲い遺跡について、本格的に発掘調査を実施する。そこからは屋根瓦の一部や動物骨が出土している事が判明しており、本遺跡ではさらなる発掘域を拡げて、瓦の成分や形状構造に関して、突厥時代の西方の他の遺構遺跡とも比較しながら、特徴を明らかにしたい。また獣骨に関しては、放射性炭素年代測定法により、年代を割り出して、その年代における突厥遊牧民の移動範囲や文化特徴について、文献資料とも併せて、分析を行なう。そしてこの調査過程やその分析結果について報告書を出版することを予定しており、国内外の研究会やシンポジウムでもその成果を公表していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年もモンゴル国をはじめ、新型コロナウイルスのパンデミック感染により、現地調査ができない上の中、2019年度にモンゴル東部で発掘調査した際の出土資料の調査を中心に、整理分析を行うことを重点的におこなった。主な経費はその際に参考にした書籍資料の購入に充てた。 そして本来、今年度、予定していた発掘調査は、次年度に実施することを科研の分担者およびモンゴル科学アカデミー考古学研究所のカウンターパートとメールで審議し、決定した。残額すべては次年度の現地調査に予定している。
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