研究課題/領域番号 |
18KK0028
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
松山 洋 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (50264586)
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研究分担者 |
中山 大地 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 助教 (90336511)
根元 裕樹 目白大学短期大学部, 歯科衛生学科, 専任講師 (90805574)
齋藤 仁 関東学院大学, 経済学部, 准教授 (00709628)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2024-03-31
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キーワード | 土壌雨量指数 / 決定木 / 融雪災害 / トムスク市 / 避難行動 |
研究実績の概要 |
2019 年度には,1. 降雪-積雪-融雪過程の土壌雨量指数への取り込みとトムスクへの応用,および 2. 融雪期のトムスク周辺における洪水氾濫発生時の避難行動シミュレーションを行なった.この他,大気の再解析データと GPS 可降水量を用いた水循環に関する基礎的な研究も行なった. 研究対象としたのは,トムスクで直近に融雪洪水が発生した 2010 年である.課題 1. について,ロシアでは日平均あるいは 3 時間ごとの気象データしか利用できないため,本来,毎時のデータを用いて計算する土壌雨量指数の入力データを日平均値から作成した場合の感度分析を,日本国内のデータを用いて行なった.さらに,降雪-積雪-融雪過程を土壌雨量指数の計算に取り入れた.その後,トムスクの気象データを用いて,土壌雨量指数を計算したところ,2010 年の春,土壌雨量指数が高まった時に融雪洪水が発生していたことが明らかになった.この研究成果は国際誌に投稿準備中である. 課題 2, について,2010 年融雪期のトム川の河川流量(一定値)を入力としてトムスク周辺の洪水氾濫状況をシミュレートし,ネットワーク解析に基づいて避難行動シミュレーションを行なった.トムスク周辺の小集落にある学校や教会は低地に位置するため,避難所には向いていないことが分かった. 2019 年 4-5 月には,融雪洪水の実態を視察するため,分担者の中山がトムスクを訪問したが,この年は融雪が早かったため,目的を達成できなかった.7 月にはゴルノアルタイスク(ロシア)で行なわれた AKTRU2019 International Symposium に,松山が参加し,研究成果を発表した.9 月には,分担者の Khromykh 博士が来日して,日本地理学会で研究発表を行なった.11 月には松山と中山がトムスク国立大学を訪問し,研究打ち合わせを行なった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
土壌雨量指数を用いた解析,避難行動シミュレーションの予察的研究,ともに,学術的に興味深い結果が得られているため.また,大気の再解析データと GPS 可降水量を用いた水循環に関する基礎的研究は,2019 年度中に国際誌に公表されているため.
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今後の研究の推進方策 |
洪水氾濫時の避難行動シミュレーションでは,人間だけでなく家畜も避難しなければならない.そのため,シミュレーション上では 2 種類の移動速度を持つ個体群を用意する.その準備研究は,計量計画研究所が提供しているマルチエージェントシミュレーションソフト artisoc を用いて,2019 年度に行なった.また,2019 年度に行なった洪水氾濫シミュレーションでは,河川流量は時間変化せず一定値としたが,2020 年度以降には,洪水時に観測された流量を用いて時々刻々と変化する氾濫域を計算し,これに基づいた避難行動シミュレーションを行なう予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
2019 年 8 月に,科学技術振興機構 戦略的国際共同研究プログラム(JST/SICORP)「日本-ロシア共同研究」(北極観測および北極域における自然利用とエネルギー資源開発のための科学技術) 「シベリアの極地および山岳地域において増加する水文、気象の極端現象が炭素および水循環に及ぼす影響に関する比較研究」に採択され,研究経費の一部はそちらから支出することが可能になったため. なお,使用計画については,2020 年度以降もロシアを訪問して共同研究を進める必要があるが,2020 年 4 月現在,新型コロナウイルスの影響で海外研究については全く予定を立てられない状況にある.
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