研究課題/領域番号 |
18KK0043
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
島村 靖治 神戸大学, 国際協力研究科, 教授 (50541637)
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研究分担者 |
山田 浩之 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (40621751)
松島 みどり 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (20634520)
神谷 祐介 龍谷大学, 経済学部, 准教授 (30636072)
中澤 港 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (40251227)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2023-03-31
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キーワード | プライマリー・ヘルスケア / 国際比較 / ベトナム / ラオス / カンボジア |
研究実績の概要 |
本研究は、2015年に国連で採択されたSustainable Development Goals(SDGs)の第3重要課題に設定された「健康な暮らし及び厚生の促進」に関連した研究課題に対して、既存データならびに現地調査を通して収集する独自データを用いて取り組むことを目的としている。2020年度は、これまでに実施してきたベトナムにおける医療保険制度の変遷とその加入率の変化に関する研究を財務省財務総合政策研究所ASEANワークショップにて発表する機会を得ている。近年、急速な経済成長を遂げているASEAN諸国の筆頭であるベトナムにおける保健医療制度に対しては益々関心が高まっている。本ワークショップは有益な情報共有の場となった。ワークショップでは、ベトナムの近年の経済状況の概観から始まり、経済成長と共にどのように国民の健康状態が改善してきたかを示した。その後、ベトナムにおける医療サービスの提供体制(公的医療施設は中央レベル、省レベル、郡レベル、村落レベルの4階層の構造をしている)を示した上で、2020年度までの国民皆保険化を目指して、これまでにどのように医療保険制度が変遷してきたかを示し、1)皆保険化を妨げる要因は何か?2)全国での加入率が8割を越えるなかで医療保険市場の「情報の非対称性」の問題はいつまで残るのか?3)医療保険加入率の増加に伴い医療サービスの需要と供給はどのように変化してきたのか?4)医療保険の加入と企業利益や労働生産性の間にはどのような関係があるのか?について研究発表を行った。なお、本ワークショップでは、ベトナム政府がいかに新型コロナウィルス感染症の拡大を防ぐことができたかについても、特にベトナム政府の初動の速さに注目した発表を行った。そして、1)と2)をまとめた論文については国際開発学会の企画セッションでも発表を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ベトナムにおける既存データとこれまでに実施してきた独自調査データを使った研究については、概ね計画通りの進捗状況である。これまでに2本の論文を公刊し、既存データを使い更に医療保険の加入率の分析を進めている。加えて、これまでに実施してきた独自調査を使った研究も進めている。独自調査はベトナム中部の3県において2014年に第1回、2017年に第2回の家計調査および医療施設調査を実施した。こうした独自調査データを使い2016年に導入された(ア)保険料の家族割引制度の加入率への影響、(イ)リファラル制度の改正による医療施設選択行動への影響についての分析などを進めている。独自調査の大きな目的は、2020年の医療保険の皆保険化を目指し、カバレッジの拡大を続けるベトナムでリアルタイムにその達成過程をモニタリングし、そこから近い将来大々的な医療保険制度の導入が予想される近隣諸国にとっての教訓を引き出すことである。そこで、2021年には第3回の調査の実施を予定しているが、新型コロナウィルス感染症拡大の影響により2021年は家計調査のみを行う計画である。 他方、医療施設での調査については2022年までの延期を決めた。この調査はインドシナ半島の3ヵ国で実施を予定している3か国ほぼ統一スタイルの医療施設調査および医療従事者調査の一部となる。医療施設調査に関してはすべて2022年の実施を計画している。こうした独自の調査を村落レベルの第一次医療施設において行うことで、プライマリー・ヘルスケアに関連した医療サービスの供給面の課題について検証する。こうした研究を村落レベルの一次医療施設で実施することで、SDGsの最重要課題「貧困撲滅」の実現にも貢献する研究となることが期待できる。しかしながら、現在、新型コロナウィルスの感染拡大の影響により調査の実施ができておらず、研究の進捗に大幅な遅延が生じてしまっている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度も引き続き既存データとこれまでに実施した独自調査データを使った分析ならびに論文の執筆、研究発表を進めていく。同時に、2021年に実施を予定しているベトナムにおける第3回の家計調査の準備も進めていく。現在、調査実施の現地カウンターパートであるフエ医科薬科大学とオンライン・ミーティングを継続しており、5月には調査内容を固め、倫理審査に諮ると共に調査対象地域における地方行政組織との折衝も進め、年内には調査を完了する予定である。 他方、3ヵ国(ベトナム、ラオス、カンボジア)で実施を予定している第一次医療施設における独自調査については、大幅な見直しが必要である。これまでに準備を進めてきた調査内容は医療サービスの供給面については、(1)基礎的な疾病・疾患に対するプライマリー・ヘルス・ケア、(2)妊娠・出産などの母子保健に関するヘルスケアに焦点を当てた質問票の作成を進めてきた。しかしながら、特に(1)については2020年に国際的に急速に広まった新型コロナウィルス感染症の感染拡大により調査内容の大幅に変更を余儀なくされている。今後も各国における感染拡大の推移を見守っていく必要があるが、おそらくは第一次医療施設においても、高熱等の症状で来院してきた患者に対応する体制を構築していくことになる。加えて、感染拡大を予防するために医療従事者が予防行動をとる必要がある。各国でどの程度そうした体制が構築できたのかについても検証を行いたいと考えている。現在、各国のカウンターパートは更なる感染拡大を食い止めるべく対策を続けている。そうした彼らの対策がどの程度上手く機能したかを検証することは彼らにとっても喫緊の課題である。こうした調査を、ラオスのカウンターパートである国立感染症研究所、カンボジアのカウンターパートである国立公衆衛生局とも緊密に連携をとりながら準備を進めていく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症拡大の影響で予定されていた海外出張、海外現地調査が延期となっているため。
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備考 |
貧困削減のための持続可能なコミュニティ開発 http://www.oair.kobe-u.ac.jp/ssh/project/09.html
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