研究課題
本研究は、2015年に国連で採択されたSustainable Development Goals(SDGs)の第3重要課題に設定された「健康な暮らし及び厚生の促進」に関連した研究課題に対して、既存データならびに現地調査を通して収集する独自データを用いて取り組むことを目的としている。最終年度は、ベトナム、カンボジア、ラオスのすべての国で調査を実施し、その調査データを用いて分析及び論文の執筆を行った。なかでも、ラオスではビエンチャンの村落医療施設において高血圧の問題に着目し、1)潜在的な高血圧者の割合、2)医療従事者の労働意欲、3)患者の満足度の分析を行っている。分析結果は、まず1)村落医療施設を訪問した患者は3割近くが自覚症状なく高血圧であることが示された。そして、2)医療従事者は待遇面での不満により労働意欲が低下する傾向にあることもわかった。そして、3)患者の受診した医療サービスに対する満足度には患者本人だけでなく、医療従事者の特性が関係していることもわかった。特に、患者と医師が類似のリスク・時間選好を有している場合に、患者の医療サービスへの満足度は高くなる傾向にあることが示された。しかしながら、医療サービスが近視眼的な視点から提供されているのであれば、それは短期的には満足度の向上に資するが、長期的には必ずしも望ましい結果には繋がらない。他方、医師だけが低い時間割引率を有している場合、医療サービスは長期的な視点から提供されているものの、近視眼的な患者の医療サービスに対する満足度は低くなってしまう。村落医療施設の利用率を向上させるためには満足度の改善が求められるが、適切な医療サービスの提供という意味では、患者の満足度だけを優先することはできない。こうした分析結果について、国内での学会で発表を行っている。なお、カンボジアでは妊産婦検診に着目し同様の調査を実施している。
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