研究課題/領域番号 |
18KK0067
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
末冨 芳 日本大学, 文理学部, 教授 (40363296)
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研究分担者 |
佐藤 博志 筑波大学, 人間系, 教授 (80323228)
植田 みどり 国立教育政策研究所, 教育政策・評価研究部, 総括研究官 (20380785)
大野 裕己 滋賀大学, 教職大学院, 教授 (60335403)
田中 真秀 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (50781530)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2023-03-31
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キーワード | 学校間連携 / パンデミック |
研究実績の概要 |
2021年度は、コロナパンデミックの中で進行した、オンラインやICTを活用した学校間連携やその基盤に焦点を与てた日本国内のケーススタディ、教育委員会調査、自治体調査を実施した。学校間連携に関する、国際的な比較分析のための基盤の作業として重要だからである。 具体的には10自治体の教育委員会・教育長・校長のインタビュー調査、質問紙調査にもとづく2020年2月27日~6月前後までの全国一斉休校のケーススタディ、120市区町村教育委員会・32都道府県教育委員会への質問紙調査にもとづく全国一斉休校開始から学校再開に至るプロセスや学校運営上の課題の検証を、学校運営における学校間の連携やネットワークにも焦点を当てて実施した。 とくに2020年2月27日の安倍晋三総理大臣(当時)全国一斉休校要請から、2020年4月の緊急事態宣言による休校期間延長を経て、6月半ばまでに順次休校解除をしていくプロセスに焦点を当て、教育委員会がいつ誰とどのように休校開始を判断し、学校や児童生徒・保護者にどのように対応したのか、学校間のネットワークはパンデミックという制約の中でどのように発生したり(しなかったり)機能したり(しなかったり)したのか、に焦点を当てた。 主要な結果としては、突然の全国一斉休校の中でも児童生徒に対し、学校の挑戦や裁量も認め、教員の自主的なネットワーク構築や、学校間の連携を促進し、柔軟かつ迅速な学びの保障を実現した自治体と、そうでない自治体との間の格差が非常に大きいということである。 また子どもへの福祉的支援については、改善されるべき課題があるという認識を持つ自治体が大半である。食の支援や居場所の保障、困難な児童生徒・家庭への訪問や支援などについては、自治体のリーダーシップにもとづき、学校間のノウハウ共有を促進することが重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外ケーススタディの再開と比較分析に向け、コロナパンデミックの中で進行した、オンラインやICTを活用した学校間連携やその基盤に焦点を当てた日本国内のケーススタディ、教育委員会調査、自治体調査を実施できているため。 またコロナパンデミックの中で進行した、オンラインやICTを活用した学校間連携やその基盤に焦点を当てた日本国内のケーススタディ、教育委員会調査、自治体調査を日本語で公刊し、海外の学会誌からの紹介論文執筆の依頼も来るなど一定の成果を残しているため。
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今後の研究の推進方策 |
学校間連携を通じた子どもへの福祉的支援に焦点をあて、日本とイギリスのパンデミック経験の比較分析を実施する。 学校の挑戦や裁量も認め、教員の自主的なネットワーク構築や、学校間の連携を促進し、柔軟かつ迅速な学びの保障を実現した政府方針(国・地方)の有無、子どもへの福祉的支援に関する学校・自治体の支援スキームの比較分析や、学校間のノウハウ共有の仕組みの有無が主な検証ポイントとなる。 また日本の国内研究での残された課題である「なぜ全国一斉休校時に、学校の動きも封じ児童生徒のケアにも取り組まない自治体・教育委員会が存在したのか」という実態の解明も、教育委員会・校長らの協力を得て進めることが必要である。 具体的には一斉一律主義(例えば1校でもできない学校があるなら、できる学校・教員の提案を却下・無視し、オンライン動画配信を実施させない)、緊急時に家庭が居場所ではなくハイリスクな場所となってしまう児童生徒の生命・安全やケアの軽視など、「できない理由」を探し、子どもファーストではなく大人ファーストの組織文化が教育委員会・学校に蔓延している可能性が高い。 これに対しイギリスはこども基本法(子どもの権利の国内法)にもとづき、学校が子どもの安全に対し負うべき責任を明記する指針を規定している。この指針によりイギリスの政府や地方自治体、学校や学校間連携組織がパンデミックの中でどのように機能したのか、イギリスにおいても検証を進んでいるが、日英比較分析を実施し、日本にとってのインプリケーションを導出していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外調査の延期により次年度執行額が発生している。海外渡航の再開により執行できる見通しである。 また海外ジャーナルへの日本語研究成果の紹介論文の依頼もあったことから、ネイティブ校正の経費としても執行見込みである。 研究成果報告のためにオンラインでのシンポジウムも予定しており開催費用としても執行する見通しである。
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