研究実績の概要 |
本研究は、日本を中心に、マレーシア、英国、そしてスイスの研究者から構成された研究チームによる国際共同研究を通じて、既存の認知リソース概念とは異なる発想に基づく「認知リソースのワーキングメモリ理論」を提案することを目的としている。2019年度には、ワーキングメモリの多要素モデル (Logie, 2011)と時分割型リソース共有モデル(Barrouillet & Camos, 2015)を理論的に統合することを目的として、二重課題を用いた実験と複合スパン課題を用いた実験を計画し実施した。二重課題実験では、n-back課題を用いて、二重課題遂行時における時分割処理のメカニズムを検討した。複合スパン課題を用いた実験では、ワーキングメモリの忘却における干渉の影響を検討した。 2020年度には、これらの実験結果を分析し、成果としてまとめ、2つの国際学会において発表した。スイスにおいて実施した2つの二重課題実験の結果は、9月にオンラインで開催された第10回European Working Memory Symposiumにおいて報告された(Barrouillet, Minamoto, Camos, Chooi, Logie, Morita, Nishiyama, & Saito, 2020)。また、英国において実施した複合スパン課題を用いた2つの実験の結果は、11月にオンラインで開催された世界最大規模の実験心理学の学会であるPsychonomic Societyの第61回大会において報告された (Saito, Morita, Nishiyama, Camos, Barrouillet, Minamoto, Chooi, & Logie, 2020)。 2020年度には大学の実験室において実験を行うことや、日本から海外へ渡航することは困難ではあったが、Web上で実施可能な実験プログラムを準備し、英国エディンバラ大学においては、Zoomを用いて実験参加者をモニターすることで、Web上で2つの実験を行なった。また、マレーシア科学大学においては、英国で実施されてきた実験のうち3つを実施した。これらの実験の結果を分析し、国際学会での発表の準備を進めている。
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