研究課題/領域番号 |
18KK0075
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
菅瀬 謙治 京都大学, 工学研究科, 准教授 (00300822)
|
研究分担者 |
森本 大智 京都大学, 工学研究科, 助教 (40746616)
Walinda Erik 京都大学, 医学研究科, 助教 (80782391)
|
研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2021-03-31
|
キーワード | Rheo-NMR / 速度イメージング / off-center Couette cell |
研究実績の概要 |
本研究では、Rheo-NMRの回転軸をずらすことによって、NMRサンプル管内の水の流れがどうなるのかをドイツのポリマー研究所でイメージングをすることと、回転軸のずれがタンパク質の凝集にどのような影響を及ぼすのかを、当研究室で新たに製作するRheo-NMR装置で調べること、を実施している。前者については、一昨年度の3月からドイツの研究所で水の流れのイメージングを開始し、極めて特徴的な水の流れのパターンを観測した。加えて、今年度は、この実験データを計算流体学によって再現することに成功した。さらに、この国際共同研究の活動中に、ドイツの研究所のScheler博士から、電場を発生させた状態でNMRを測定する電気泳動NMRをタンパク質に適用するという新たな研究を提案され、実施することになった。興味深いことに、両極性ポリマーでは溶液のpHが変われば、トータルの電荷が変わり、電気移動度も変化するが、タンパク質の場合(ユビキチンとBSAを試した)、中性付近でpHが変わっても電気移動度があまり変化しない領域が存在した。これは、ポリマーと違い、タンパク質の場合は電荷が偏る傾向にあるため、カウンターイオンの集まり方がポリマーとタンパク質とで異なると解釈できる。現在、水の流れのイメージングと電気泳動NMRの結果について論文を準備しているところである。 また当研究室において、Rheo-NMRの回転軸の位置をイメージングする方法を確立した。ただし、現在のところ、回転軸を系統的に狙った位置にずらすことは不可能ではないが容易ではない。まずは、回転軸をできる限り中心に合わせてタンパク質のアミロイド線維化過程をモニターした。繰り返し同じ実験をしても、ほぼ同じプロファイルが得られ、再現性が良くなることが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Rheo-NMRの回転軸をずらして、水の流れのイメージングを行うことについては、実験的に十分なデータを取得することができ、さらに、その実験データを計算流体学によって再現することにも成功した。ここまでの結果については現在、論文を準備している。さらに、研究開発当初には予定していなかった、電気泳動NMRのタンパク質への応用にも着手し、これについても論文投稿の準備を進めている。昨年度は、夏までの研究活動(大学の学期間にドイツを訪問しており、通常、8,9月か2,3月がその時期である)は、予定以上の進度であった。しかし、昨年度の3月にドイツのポリマー研究所に赴き、タンパク質を入れた状態での実験などを実施する予定であったが、コロナウイルスの影響のため急遽取りやめになった。当研究室にドイツのものを模倣した装置を設置する予定もあったが、これも共同開発してくれている東京の会社の活動が休止したため、延期となった。そのため昨年度については、後半があまり予定通りに進まなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
最も大きい懸念材料はコロナウイルスの影響である。本研究は、ドイツのポリマー研究所との国際共同研究で、本研究の活動の1つにドイツのポリマー研究所にしかない装置を使用することが盛り込まれている。そのため、コロナウイルスが終息しないことには、ドイツに行くことができないため、この先の計画をたてることは極めて困難である。もともとの予定では、大学の学期間にドイツに行くことを計画していたが、この夏はおそらくコロナウイルスの影響がまだ残っていることが予想されるため、とりあえずは、年度末の2,3月にドイツに行くことを計画している。また、研究期間を来年度に延長することも視野に入れている。いずれにせよ、ドイツに行くことについては、現状では様子見する以外にない。この夏ぐらいに今後、どうすべきかを改めて検討したい。 一方、本研究では、Rheo-NMRの回転軸をずらすことがタンパク質の凝集にどのような影響を及ぼすのかを調べることも研究計画にあげてある。我々が独自製作したRheo-NMR装置では、もともと、回転軸をずらすことが困難であったが、昨年度の研究活動から、回転軸のずれ具合を計測できる方法を確立した。今のところ、狙った位置にずらすことはできないが、繰り返し回転軸を意図的にずらす操作を行うことによって、目的の位置にずらせることが分かった。そこで、このようなやり方で、系統的に回転軸をずらし、その影響がタンパク質の凝集にどうような影響が出るのかを調べる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの影響で、ドイツ行きがなくなり、さらに共同開発してくれている会社が休止したため装置開発が遅れたため、次年度使用額が生じた
|