研究課題/領域番号 |
18KK0085
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
有賀 智子 (古川) 九州大学, 基幹教育院, 助教 (00802208)
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研究分担者 |
小松 雅宏 名古屋大学, 教養教育院, 准教授 (80345842)
佐藤 修 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 特任講師 (20377964)
吉田 純也 東北大学, 理学研究科, 助教 (60573186)
吉本 雅浩 岐阜大学, 教育学部, 特別研究員PD (40854964)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2022-03-31
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キーワード | タウニュートリノ / Ds中間子 / CERN-SPS / 飛跡検出器 |
研究実績の概要 |
タウニュートリノは3世代あるニュートリノの中でも生成と検出が困難であったため、これまでの実験データが少なく、基本的性質である反応断面積の測定も不定性が大きい。反応断面積を精密に測定することは、ニュートリノ振動実験や宇宙からのタウニュートリノ観測のための基礎データになるとともに、タウニュートリノ反応において標準理論を超える物理があるかどうかを探索する試みである。本研究では、反応断面積測定における最大の不定性であるタウニュートリノの生成について、CERNのSPS加速器による陽子ビームを用いて研究する。それに加えて、これまでの実験データが少ない超前方のチャーム粒子生成についての研究が可能であることから、今後の高エネルギーニュートリノ測定に向けた基礎データとしてその測定にも取り組む。 CERNのSPS加速器による400GeV陽子ビームを用いた照射実験(物理ラン)に向けて、パイロットランのデータを用いてデータ読み出し・解析体制の構築を行ってきた。上で述べた超前方のチャーム粒子生成については、そのパイロットランのデータを用いて実施している。微小な崩壊角を捉えるため、高精度での角度測定を開発し、背景事象を減らすため運動量測定手法の改良を行っている。それとともに、物理ランでのタウニュートリノの生成源であるDs中間子のタウ粒子への崩壊事象の測定に向けて、検出器デザインの最適化、エマルションフィルムの製造体制の構築、データ読み出し・解析体制の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タウニュートリノの生成源であるDs中間子のタウ粒子への崩壊は、数mmという短い飛距離での数mradという微小な折れ曲がりを特徴とする。本研究では、Ds中間子の検出方法としてこの微小な折れ曲がりを捉えるため、50nmという高い3次元位置精度を持つエマルション検出器を用いて高精度での角度測定の開発を進めてきた。高密度の飛跡を用いてフィルム間の精密なアライメントを取ることが可能であり、複数枚のフィルムにおける飛跡の位置情報を用いて角度を測定することにより、飛距離が長い事象に対し高い角度精度を実現する手法を開発してきた。崩壊角の小さい超前方成分についてさらに感度のよい測定を実現するため、運動量測定手法の改良による背景事象の削減に取り組んでいる。 CERNのSPS加速器による400GeV陽子ビームを用いた照射実験(物理ラン)に向けては、検出器デザインの最適化、標的物質の購入、照射システムの準備、エマルションフィルムの製造の体制の構築、CERNの暗室の準備、大量のデータ読み出し・解析体制の準備を、国際共同研究にて遂行している。
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今後の研究の推進方策 |
CERNのSPS加速器による400GeV陽子ビームを用いた照射実験(物理ラン)を、今年9-10月と来年に予定している。2021年には約100平米のエマルションフィルムを製造し、CERNにて検出器を構築して照射実験を行う予定である。そのために必要なCERNの暗室を、ベルン大学グループと協力して整備し、エマルション検出器の組み立ておよび現像の体制を整える。また、エマルションフィルムのサイズをパイロットランの4倍にして、検出器の組み立て・ビーム照射・現像・データ読み出しの高速化/効率化を実現する。そのためビーム照射システムの大型化に取り組む。ビーム照射実験での検出器の組み立て、照射、現像については、CERNの協力者、ロシアやトルコのグループとも協力して、国際共同研究にて遂行する。現像したフィルムのデータ読み出しを実施し、膨大なデータ処理のさらなる高速化に取り組んで、Ds中間子からタウ粒子への崩壊探索を遂行し、タウニュートリノ生成を測定する。また、主目的に加えて、Ds中間子に限らない、大統計での超前方チャーム粒子生成の測定を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外出張を延期したため、それに関わる旅費を次年度使用に変更した。また、検出器構造の一部変更を進めたため、それに関わる消耗品の購入を次年度使用に変更した。
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